また、並行して受託事業も徐々に拡大、更に最近臨床研究分野でも事業を開始し、業界でも存在感を増しつつあります。
実際業績も好調のようで、社員数160名(2021年4月現在)に対し、今期60名超の採用を計画しており、CRAを中心に臨床開発関連人材の採用にも積極的です。
一方、派遣という就業形態に不安をお持ちのCRAの方も少なくないのですが、岡野様のお話を伺うと、それが杞憂であることがよくわかります。
さらに、アスパークが受託事業も拡大していることで、派遣と受託を行き来できるなど他CROにはないユニークで柔軟なキャリア設計ができることは、CRAにとって非常に魅力的な環境だと思います。
ぜひ、派遣CRAへの先入観、アスパークが派遣のみという先入観を一度脇に置き、本インタビューをお読みいただきたいと思います。
▼インタビュイー:岡野さち絵様 株式会社アスパークメディカル 営業部 採用推進グループ 大学卒業後、精密機器メーカー営業、ベンチャー企業の採用担当、採用代行企業を経て、未経験からMRに転向。メディカル業界と採用の経験を活かし、メディカル特化型(特に臨床開発分野)のエージェントとして8年ほど従事。2020年8月より現職。 |
|
▼インタビュアー:小川善之 inspire株式会社 エグゼクティブコンサルタント 長年人事関連の業務を担当、外資系ファーマの臨床開発部門及び営業部門のHRパートナーとして9年間、外資系医療機器メーカーにて3年、CROの人事部長として7年間勤務後inspire株式会社のキャリアコンサルタントとなる。メディカル系を専門領域とし、マネジャー・リーダークラスを中心にサーチを手がけ、実績を挙げている。
|
*インタビュー実施日:2021年7月27日
Ⅰ.会社/事業全体及び採用の状況
小川:最近の会社事業の状況はいかがでしょうか、特にコロナ後の変化などあれば、お教えください。
岡野様:そうですね、私の入社前になりますが、2020年4月最初の(第一回目の)緊急事態宣言から昨年の夏ぐらいまでは派遣の案件がほとんど入ってこない状況といいますか、止まっていたそうです。感染症の拡大を理由とした派遣先での契約終了は1人も出なかったそうですが、、例えば派遣先を変えたい社員が次の選択肢が見つからなかったというのがこの時期でした。ただ昨年の夏くらいから年末ぐらいにかけて派遣案件としては徐々に持ち直してきました。
小川:さすがですね。
岡野様:今年2021年の年明けから今は、昨年よりも派遣案件は少し増えているような印象があります。
小川:派遣社員の供給が追い付かない、? といったような感じでしょうか?
岡野様:そうですね。ただオーダーをいただく内容に関しては、以前は例えばCRA経験3年以上など結構ざっくりとしたオーダーでしたが、最近は領域の経験や、基幹病院の担当経験、さらにオンコロジー領域の中でも分子標的薬の経験ですとか、ある外資系の製薬会社ですと「うちのSOPをやったことある方」であるとか、結構細かいオーダーに変わってきているような状況です。
それから、最近はCRAより少し上のCROコントロールのポジションや、更にはスタディマネジャーのポジションなども、製薬会社から派遣の依頼があります。
小川:オーダーが難しくなってきているのですね。
―受託の事業についてはいかがでしょうか?
岡野様:受託の事業に関しては、コロナの影響は弊社に関しては正直なところあまり強く受けておりません。今稼働しているモニタリングプロジェクトは、コロナの関係で施設訪問が少しできなかったという時期があったくらいです。
また、受託事業は40名弱の人数がいますが、そのうちQCが約15名と多い部門になっています。その関係もあって、コロナの影響も含めてあまり業務の波といったところがなかったのですが、この7月、8月から逆に既存顧客である某製薬会社の業務量がかなり増え、それに伴って今QCを急募で募集しているというありがたい状況でございます。
小川:そうすると、今急募なのはむしろQCですね。
岡野様:もちろん、QCも必要なのですが、つい先ほど(取材日:2021/7/27)、開発部長からCRAを10名募集せよという話がきたところです!
小川:ホットな情報をいただきありがとうございます!
ー今後の採用計画などはいかがでしょうか?
岡野様:会社全体としては、お陰様で売上が順調に伸びており、成長基調を想定して、派遣、受託に限らず今期も60名超の採用を計画しています。ですので、採用部門としては、毎月5~6名ずつ採用しなければいけないという嬉しい悲鳴を上げている状況です。
小川:特に需要が多い職種はCRAでしょうか?
岡野様:そうですね。先ほども申しあげた通り、年度目標として、60名超の採用を計画しています。そして、これも先程お話した通り、受託の方で年内に10名のCRAが必要となっております。残りの50名超は、もちろんCRAの方も数多く採用したいのですが、CRAに限らずデータマネジメント、統計解析、QC、PVなど、様々な職種での採用を目指しています。
小川:欲しい人材としては、いずれもその職種の経験のある方をチームに迎えたい、といったところでしょうか?
岡野様:はい、そうですね。弊社の採用方針としましては、未経験採用ではなく経験のある方を採用したいと考えています。CRAであれば基本的に経験3年以上を軸に採用させていただいていますが、ただここ最近は3年のご経験があっても試験の立ち上げから終了まで経験されていない方や、逆に1年半くらいの短期間でもしっかりご経験ある方など、様々おられますので、一概に経験年数というよりご経験の中身で見させていただいております。
小川:現状としては、最低1年以上、できれば3年以上のご経験が必要で、選考では経験年数以上に経験した中身をしっかり見られるということですね。
岡野様:そうですね。特に派遣型ですと、自身で自立して仕事が出来る方という形となってしまいますので、ご経験のある方でないと難しいということになります。
小川:わかりました。
Ⅱ.派遣事業、派遣でのCRAのキャリアなど
小川:全体的な状況をお伺いさせていただきましたが、ここからは派遣事業、受託事業のそれぞれについて、詳細を伺います。
―まず、派遣事業について詳細を伺います。製薬会社が、御社に委受託ではなく、派遣のリクエストをする背景には、以前と比べて変化があるのでしょうか?
岡野様:先程も申しあげましたが、以前はCRAや、担当者といった案件が多かったのですが、ここ最近は、“上位層“といいますか、リーダー、PLが欲しいといった案件も来ています。弊社が派遣する社員が、派遣先製薬会社のプロジェクトのリーダーとして、製薬会社の正社員の方をリードするというようなポジションもあります。
小川:ということは相当に経験のある方のニーズもあるということですね。
岡野様:そうですね。50代の方でもニーズはあります。
実際に50代後半の方も採用させていただいています。外資系の製薬会社でCPMのご経験があり、現在弊社からある内資系の製薬会社にPLとして派遣させていただいています。
当然ですが、最初は派遣にかなり抵抗感をお持ちだったのですが、実際派遣で働いていただくと「あ、前職とそんなに変わらないなぁ」とおっしゃっていただくようになり(笑)、活躍されています。ただ、どうしても派遣という形態上、クライアントニーズは40代くらいまでのご希望が多くはなりますが。
小川:製薬会社におられた方が製薬会社で仕事するのですから、そこはやりやすいということですね。
岡野様:そうです、そんなに違和感なく仕事ができるということですね。
小川:派遣で長期的にキャリアを構築された成功例があれば教えていただきたいのですが。
岡野様:弊社はちょうど今年、分社化し、設立から10年となります。
*注:事業自体は、親会社の一事業部時代を含めれば、10年超の歴史がある
小川:HPにも掲載されていましたね。
岡野様:はい、10周年の節目として、6月に全社員を集めたタウンホールミーティングを開催したのですが、その時に10年以上勤続している社員が10名を超えていまして、勤続表彰もいたしました。
小川:すごいですね 。
岡野様:色々な方がいますが、勤続表彰をしたうちの一人が弊社採用ページに掲載している者でして、弊社にCRA未経験として入社し、未経験で派遣で就業後、受託で更にキャリアを積み、また、派遣に戻られています。現在かなり高額な請求金額をいただきながら、派遣先の企業でリーダーに近いポジションで活躍されています。その方がもう10年以上ですね。
他に、50代前半ぐらいの女性もいますね。
小川:いままで数社派遣先を変えながらでも、それだけ一貫した経験をしているということですね。そのこと自体成功でもあるように思うのですけども、ずっと派遣ということにご不安を感じている求職者も多くいます。そういう方々にとって、参考になるキャリアパスの事例があれば教えてください。
岡野様:派遣先でご評価いただき、そのままその製薬会社側に転籍する事例もあります。
小川:本人が行きたいかどうかを尊重してくださるということですね。
岡野様:弊社としても転籍で行っていただくと、逆に弊社から行っている人がいるということが採用にもプラスになりますし。
小川:そうですね。
岡野様:その製薬会社との関係性もすごく良くなってきますので。
小川:はい。
岡野様:ただ、転籍を断る方もいらっしゃいます。派遣先一社でキャリアを築いていく中で、もう少し違うところで自分の幅を広げたいという思いを持たれていたり、将来的にもその時々の希望に応じて派遣先を変えていくというキャリアを選べるのが派遣のメリットとして感じてくださっています。
小川:御社の大きな特長の一つである、「契約チャ―ジ連動型報酬制度」について教えてください。すごくユニークな制度だと思います。
岡野様:契約チャ―ジ連動型の給与体系は、派遣社員本人に対して、すべてのものを給与として還元して支払おうというシステムになっております。弊社は基本となる給与テーブルに応じた金額設定をさせて頂いているのですが、CRAとしてある程度、一人で仕事が完結できる方に関しては、その給与テーブルに乗らない給与水準を希望される方も多々いらっしゃり、また派遣先の製薬企業からもそれだけの高い評価を得ていらっしゃるのも事実です。そこで、そのニーズ応えるために、請求金額の大半をご本人にバックするといったシステムを作りました。
CRAさんでだいたい月額のご請求金額、派遣先に請求させていただく金額がだいたい100万から130万円くらい、高い方ですと140万円くらいになります。そのため、派遣社員の年収がCRAで900万円とか1000万円、残業代を含めると1200万円を超える方もいらっしゃいます。
小川:入社した方とか異動される方の派遣先の希望というのは、どれくらい叶うものなのでしょうか?
岡野様:基本的にその方のスキルや経験に応じて、その方にマッチしそうな案件を全て提示させていただいて、ご本人が選択するという形式になります。ですので、その方の経験が多ければ多いほど選択肢は広がるという形になります。
例えば、5つ候補があったとして、その中から「どこからアプローチしていきたいですか」というのを確認させていただいて、その方の優先順位に沿ってアプローチしていくので、ご本人の納得度は高く保てていると思います。
小川:それだけ選択肢を提示できるだけ案件があるというのも、御社が派遣事業に地道に注力してきた結果ですね。すごいですよね。
また、会社側の都合でピンポイントに「この派遣先に行ってください」ではないという点も社員を大切にされていることが窺えます。
―ところで、私も以前CROで人事をしており、派遣CRAのフォローアップについて、経験があるのですが、まさに外部なので日頃会えないですから、派遣社員が“疎外感“を持たないように苦心していました。そういったフォローアップ体制についてはどういう風にされていますでしょうか?
岡野様:営業担当者が、派遣先及び派遣社員のところに定期的に訪問し、状況の確認をします。通常3か月更新ですので、契約期間の間に必ず一度は面談を実施するというフローが確立されています。
それ以外にも適宜こちらから連絡を取ります。派遣事業は”開発1部”で担っているのですが、その開発1部の部長が元々CRA出身で、本人自身が派遣での就業経験も、受託での経験も持っている、さらにPL経験もあるという人物です。ですので、派遣社員の業務上の困りごとに対して、専門的な観点でもメンターとしてフォローに入る体制を整えています。
小川:日頃のフォロワーパスは営業担当の方がして、部長さんも定期的に入ってフォローされているということですね。
岡野様:社員との面談の時に必要に応じて入りますね。何か仕事の進め方 でわからないところがあったらその部長が同席してアドバイスするなど、今も早朝に時間を作ってCRAの質問タイムとしています。部長本人は、とても大変な思いをしているようですが(笑)
小川:逆にそういう風にしないと、社員のリテンションにつながらないとか(笑)
岡野様:そうそう(笑)
小川:競合相手もいますしね(笑)。わかりました、ありがとうございます。
小川:一方、クライアントである製薬会社からはどういう点を評価されているのでしょうか?
岡野様:そうですね。元々CRA派遣の領域では、安定的に人材を供給できる会社はそれほど多くなく、そのなかで弊社は比較的安定的に人材を供給できていたというところは評価いただいていると思います。
あとは、派遣事業の営業担当がクライアントの細かいニーズを引き出して、収集しており、より的確なマッチングをしています。そのため、弊社の社員は、マッチング率も高く、最大限のパフォーマンスを発揮できます。
Ⅲ.拡大している受託事業でプロモーションの機会を提供
小川:次に受託事業についてお伺いします。最初から企業治験が多かったのでしょうか? 他のCROでは医師主導や臨床研究から入っていく会社もあるようですが。
岡野様:弊社は最初からモニタリングの企業治験でスタートしています。国内大手製薬会社から比較的小規模なモニタリング業務を受託しました。その後、外資系製薬企業からモニタリング業務のプロジェクトを受託しました。その後、同一クライアントからQCのプロジェクトをいただき、QC業務、モニタリング業務のリピートをいただいております。
小川:それが10年くらい前から始まっているということですね?
岡野様:そうですね。ここ直近2020年から組織編制をいろいろ変え、また、2年くらい前に、開発本部長と開発部長が製薬会社から転職で入って来られています。それで、開発部を開発本部に名称変更したり、職責をきちんと明確にしたりですとか、そういった動きをしていますね。
小川:受託案件の場合モニタリングだけ、DM・統計だけといった案件だけでなく、できればフルパッケージでやってほしいといったニーズもあると思います。そうすると例えばファーマコヴィジランスやメディカルライティングといった職種も必要かと思いますが、そういった領域の受託も伸ばしていくのでしょうか?
岡野様:まだ弊社だけでは十分対応できていないのですが、拡大は予定しています。今は “フルパッケージ”と言われた場合は、パートナー企業と組んで対応させていただいています。ただ、やはりメディカルライティングに関しては急ぎ必要だよねという話はありまして、実は一人採用が決まっています。
小川:御社として、受託をこれから伸ばしていこうとしたとき、製薬会社のニーズの把握など、なかなか難しいものがあると思うのですが、かなりネットワークを張られてやっておられるのでしょうか?
岡野様:幸運なことに派遣での取引がかなりありますので、派遣先のお取引のあるクライアントからのご相談ですとか、そういったところをフックとして案件のご紹介や情報提供をいただく事が多いですね。
小川:そこは派遣事業でのネットワークが有効だということですね。
岡野様:そうです。
小川:先ほど製薬会社の方から、ジェネラルマネジャークラスの方が来られているという話でしたけども、そのようなリーダークラス以上の方は何人くらいいらっしゃるのでしょうか? 受託でそういったリーダーが出来る方です。
岡野様:受託のGMは今3人ですね。リーダーは他にもいるのですが、管理職となると3人ですね。
小川:その下にプロジェクトリーダーがいるということですね。
岡野様:そうですね。
ただ開発本部長、開発部長、DM・統計解析グループのマネジャー、この3人が管理職ですが、彼らがまだ兼務している部分もあり、早くそこを手離れさせていかなければならないため、その意味では上位ポジションが空いてる状況ですね。
ですので、管理職層でも優秀な方がいれば積極的に採用しますし、若い方もパフォーマンスを発揮していただければプロモーションしやすい環境です。
小川:なるほど。受託で入られた方で、キャリアアップをしたい方はそういうチャンスも見えてくるのですね。
岡野様:あります。他の大手の会社さんですと、なかなか上が詰まっていて上がれないとかあると思いますけども。
小川:はい、ありますね。
岡野様:プロモーションのチャンスは大手に比べ、開かれていると思います。
小川:依頼者から見て、御社の受託事業の強みや、他CROとの差別化のポイントは、どのあたりでしょうか。
岡野様:そうですね、まだ規模が大きくない状況ですので、製薬会社から逆に「こういうことはできないか?」と相談ベースで持ち掛けられることが多くあります。そういった特殊なご要望にも「弊社だったら、ここまでできます」と柔軟に対応できるという点があります。またあえてかっちりと細かいところまで決めず、大枠だけ決めて受託業務を開始し、あとはご相談しながら進めていける点はご評価いただいていると思います。組織が小さい分フレシキブルに対応できるといったところは強みであるといったところです。
あと、派遣と受託は事業部を分けてはいるのですが、派遣事業を含めた全社としてのCRA等の経験値でみますと、幅広い領域の経験を持っているメンバーがいますので、そういった知見を受託事業で生かせる点も強みです。例えば製薬会社からがん領域の試験のご依頼を頂いた際、弊社のプロジェクトメンバーの中には、がん種レベルで必ずその領域経験者がいる、といったところでしょうか。
それと、弊社は未経験採用を現在はやっておらず、経験者採用に特化しておりまして、経験年数の中央値が7~8年くらい、平均値で5~6年くらいです。製薬会社からは、経験が浅い方をアサインされるというリスクが少ないというのは、すごくメリットだとおっしゃっていただいてます。
小川:それと、途中で交代するなどというリスクも少ないということですね。