転職はビジネスキャリア、さらにはライフキャリアで実現したいことのための手段の一つでしかありません。
そのため、「転職」が頭をよぎったら転職活動と同時に、下記4点をしっかり考えるべきです。
(1)将来的に実現したいこと、やりたいことの明確化
中長期キャリアを考える際、長く安心して勤められる会社や職種は何かという視点はいただけません。東芝やシャープのような大手企業でも存続の危機に陥る時代に、終身雇用が保証される会社はまずありません。
そもそも、「長く安心して勤められる会社」で、仕事は面白いのでしょうか? 日本の終身雇用の仕組みは、会社側から見ると安心の提供と引き換えに、極端に言えば社員には会社の言いなりになってもらうという前提がありました。そのため、自身の専門性からかけ離れた部署への異動や、見ず知らずの土地への転勤も受け入れなければいけません。
しかし、今の時代、そのような会社の要求に従ってもリストラがあります。だからこそ、将来的にやりたいこと、ありたい姿を明確にし、その実現に必要なスキルや人的ネットワークを獲得することが必要になります。そういった自身の武器の獲得が、自己実現につながるだけでなく、会社が傾いた際のリスクヘッジにもなるわけです。
そして、将来的にやりたいこと、ありたい姿が明確になれば、その目標に向かってキャリアプランも考えられるということになります。
なお、ビジネスにおいて「やりたいこと」とは、「どういった顧客に、どのような価値を提供し、どのように喜んでもらいたいか」という視点で考えるべきです。なぜなら、ビジネスとは人に製品やサービスを提供したことに対し対価を頂くという行為であるからです。具体的な例で言えば、「うつ病で苦しむ人を助けたい。そのために、画期的な抗うつ剤を開発し、患者さんの届けたい」といったものです。
一方、やりたいことが「経営者になりたい」「長く安心して働きたい」だと、なんとも利己的に見えないでしょうか。もし一緒に働くのであれば、「うつ病で苦しむ人を助けたい」というような顧客志向を持っている人と働きたいですよね。
(2)中長期的キャリアプラン
キャリアプランとは、将来的にやりたいこと、ありたい姿を実現するための行動計画のことです。
行動計画はどう立てればいいでしょうか?
それにはまず「将来的にやりたいこと、ありたい姿」をいつまでに実現したいかを決めます。
「軸=やりたいこと」「目標=実現したいこと」と考えます。
次に、その実現のために必要なスキルや経験を洗い出します。そしてその必要なスキルや経験を得られる場所がどこかを洗い出します。
そこまで洗い出せば、いつまでにどんな職場でどんな経験とスキルを得て、その次にどういうステップを踏むのかといった道筋が見えてくるはずです。そうすると、今回の転職先にどういった職種や会社を選ぶかも、しっかりとした「軸(=やりたいこと)」を元に、かなり明確に見出せるはずです。
ちなみに、「うつ病で苦しむ人を助けたい。そのために、画期的な抗うつ剤を開発し、患者さんの届けたい」という思いから、
・いつまでに実現したいか?
・その実現のために必要なスキルや経験は何か?
・その必要なスキルや経験を得られる場所がどこか?
は具体的に考えやすいと思います。
ここでは
「軸(=やりたいこと)」=うつ病で苦しむ人を助けたい・「目標(=実現したいこと)」=画期的なうつ剤の開発と位置付けることができます。
一方、「経営者になりたい」はともかく、「長く安心して働きたい」だと、キャアリアプランを考えようがないことがわかると思います。
(3)転職以外の手段も考える
将来的に実現したいこと、やりたいことを明確にし、その実現のための中長期のキャリアプランを考えると、自ずと今回の転職先にどういった職種や会社を選ぶかも、かなり明確に見出せることを説明してきました。
しかし、その応募先候補に対し自身がスキル不足である場合や、明確であるがゆえに希望の企業が見つからないといった場合も出てきます。その場合、転職以外の手段も視野に入れておくのも一つの手です。
具体的には、
・現職で異動や事業の立ち上げを行う
・勉強する(*MBAなどに通うのもその一つです)
・副業で自己実現を目指す
・世の中に自身がやりたいビジネスや職種がなければ、起業する
といった選択肢も考えるべきです。加えて、常にこれらを複数重ね合わせ、キャリア形成を行っていく必要があります。
*MBAとは、Master of Business Administrationの略語です。資格ではなく「学位」で経営学修士のことです。
(4)自分にあった転職エージェント(キャリアアドバイザー)を見つけるには
将来的に実現したいこと、やりたいことを明確にすることが、中長期キャリアや転職を考えることにとって非常に重要なことはわかっていただけたでしょうか。
しかし、多くの求職者の話を聞くと、少なくない転職エージェントが、
「求人を案内し、とにかく応募させ、内定・入社に結びつける」
ことにフォーカスしてしまっている現状があります。
これはなぜでしょうか。
それは、人材紹介ビジネスの構造に理由があります。
一般に、転職エージェントは求職者が推薦した採用企業に入社しないと紹介手数料として売上が発生しないからです。
言い方を変えると、求職者の面談自体は全くお金にならないので、「応募(推薦)→内定→入社」にこだわるエージェントが少なくないのです。
そういったエージェントにあたった求職者からは、
「自身の可能性ややりたいことを探求するより、今の自分で内定が取れそうな求人の案内ばかりされる」
「相当な努力が必要なキャリア目標を伝えたら、“そんなのは今のあなたには無理だから、現実的な求人を見ましょう”と言われた」
というようなお話をよく聞きます。
しかし、自身のキャリアは自身のものです。エージェントの都合で応募先や、ましてや入社先を決めてはいけません。そのためにも、中長的に実現したいこと、究極的に実現したいことを明確にし、キャリアの軸をしっかり持ち、自己都合で転職を勧めてくるエージェントの口車に乗らないようにしなければいけません。
では、どのようにすれば自分に合った転職エージェントを見つけられるのでしょうか?
良い転職エージェントに最も共通していることは、「しっかりとヒアリングをしてくれる」ことです。たとえ現状とやりたいことのギャップが大きく、即応募先が見つからなくても親身になって話を聞き、目の前の転職だけでなく、中長期キャリアの実現方法を一緒に考えてくれるかどうかで判断することです。
一方、あなたの希望や中長期キャリアの実現に沿った提案ではなく、今のスキルや経験で応募できるところ、内定が取れそうなところばかり紹介し、強引に目の前の転職だけを推し進めようとする転職エージェントには注意したほうが良いかもしれません。
あなた自身のキャリアはあなた自身のものです。転職エージェントの都合で応募先や、ましてや入社先を決めてはいけません。そのためにも、中長的に実現したいこと、究極的に実現したいことを明確にし、キャリアの軸をしっかり持ち、自己都合で転職を勧めてくる転職エージェントの口車に乗らないようにしなければいけません。
ですので、複数の転職エージェントに登録し、良いエージェントに会ってみること大切です。
あなたは、本当にやりたいことを見つけていますか?
イメージが湧かない方は、「目標(=実現したいこと)」が見つけられていないのかもしれません。
次のSTEPでは、「やりたいこと」の見つけ方を次のSTEP2でしっかりとご説明いたします。