転職の進め方とコツ

STEP7.現職との退職交渉

転職の進め方とコツ7
目次

前回説明した内定通知後の報酬条件交渉も無事終わり、内定受諾をしたら、次は現職の退職手続きを進めます。

ここでは、退職の進め方を説明いたします。

1.円満退職するには

まず、法的には民法627条から、雇用契約については退職日の2週間前に雇用者に申し出ればよいという条文になっています。
就業規則でたまに「退職する場合は、3カ月前に届出を出すこと」と定められている会社がありますが、当然法令が優先されます。
ただ、何より重要なのは、法令や就業規則ではなく、会社や職場の仲間、顧客などに迷惑をかけない(あるいは最小限にする)ことです。
では、どのような手順を踏むと「迷惑をかけない退職」になるでしょうか。
以下に必要なアクションを記します。

1-1 退職手続きについて

退職手続きを進める前に、就業規則などで手続きについて確認することが必須です。
退職の何カ月前までに申し出ればいいので、退職届に関し所定のフォーマットがあるのか、退職届は直属の上司に提出するのか、人事宛に提出するのかなど、会社ごとに書類・提出先などが異なるのでしっかり確認をしましょう。

1-2 「退職願」と「退職届」の違い

退職するにあたって、「退職届」もしくは「退職願」を提出する場合が多いです。
ただ、厳密に言うと「退職届」と「退職願」は違いがあり、注意を要します。

「退職届」・・・会社に対する退職の通知であり、 この届出の記載の日程で労働契約が終了します。
「退職願」・・・退職をさせてほしいという「お願い」であり、
          会社の承諾があるまでは労働契約は終了しません。
          書面で提出することで、意志の固さを示すことができます。

たまに「転職先が決まっているのに、会社が退職を認めてくれず、辞めることができなくて困っている」という相談を受けますが、上記の違いを意識せず「退職願」で出してしまっている場合が多いようです。

1-3 退職日の決定

業務の引き継ぎ期間は1カ月程度が一般的です。ただし、担当業務や会社側の事情次第で、1週間で済むこともあれば、1か月以上かかる場合もあります。

退職日を決める前に、残っている有休日数を確認しておきましょう。
退職日までに有休日を消化したいことを伝えないと、有休消化せずに退職することになります。
有給消化日数を含めた上で、引き継ぎスケジュールも考え退職希望日を提示してください。
円満退職するためにも、何よりも業務の引継ぎをしっかりと進めることが大切です。

まずは、引き継ぐ業務内容を洗い出し、スケジュールを立て、引き継ぎ書を作成しましょう。

1-4 引継書の記載内容

引き継ぎ書の内容は5w1h+αで考えるとわかりやすくなります。

①引き継ぐ業務の概要:why、what
②業務で関係する組織・人:who
・・・社内、顧客、業者さんといった整理をして考えます
③業務のスケジュール:when
・・・担当業務の特長にあわせ日、週、月、半年、年間といったサイクルで記載します
④業務手順:how
⑤情報や資料の保管場所:where

後任者が困らないように、できるだけ丁寧かつ具体的に記載しましょう。初めてその業務に取り組む人向けに作成するよう心がけてください。

また、後任者への引き継ぎの前に、引き継ぎ書を上司や同僚に確認してもらい、漏れがないか、分かりにくい表現はないかなどを確認してください。内容をブラッシュアップすることで、さらに分かりやすい・使いやすい引き継ぎ書になるでしょう。


たまに、「会社が後任者を立ててくれないから、自分も引継ぎができない」とおっしゃる方がいます。
人の退職は基本的には常に突然なので、退職する会社側も、後任の準備はすぐにはできないことも多々あります。

そんなときは社内のファイルサーバーに引き継ぎ書を保管し、フォルダ/ファイルを他の人が見ても使いやすいように整理しておきましょう。

そうすれば、万が一最終出社日まで後任者が定まらなくても、職場の仲間にできる限りの情報は提供できるはずです。

2.入社日の交渉はできるのか?

「転職先企業は内定受諾から入社までどのくらい期間待ってもらえるものでしょうか?」

という質問をよく受けます。これに回答すると、概ね内定から2カ月後くらいが一般的です。優秀な方には早く来てほしいので、

「1カ月後くらいでどうですか?」

と提示される場合もありますが、現職での引継ぎがあれば、そういった背景を説明することで大抵の会社は相談に応じてくれます。

2-1 入社を考え直した方がよい企業

「内定が出たが、内定後1~2週間で来てくれと強硬に言われてしまって。でも、引継ぎはちゃんとやりたいのですが、どうすればよいでしょうか…?」

という相談を受けます。

個々にのっぴきならない事情はあるのでしょうが、こういう会社はそもそも入社することを考えなおした方がよいでしょう。

このような会社に限って、自社の社員が退職する場合、退職届を出してから2週間で辞めようとすると「引き継ぎが終わっていない」と相当に憤怒すると思います。

逆に、「辞めるやつは引継ぎなんかしなくていい。とっとと辞めろ」と憤怒するかのどちらかです。

いずれにしても、よい会社ではないでしょう。おすすめできません。

2-2 入社日は調整可能か?

「入社時期をどれくらい後ろにずらすことができるでしょうか?」
よく、転職者からはこんな相談を受けます。
これも会社の考えや、その募集ポジションの状況で都度変わってきますが、筆者の経験で言うと3カ月先までが限界だと思います。

それ以上になると、採用側はもっと早く入社してくれる人を探そうという気分になるからです。

ちなみに、製薬企業やコンサルティング会社が臨床医を採用するような場合は、半年くらいは待ってくれます。
ビジネスセンスがあり、かつ英語ができる臨床医は相当に貴重だからです。
そういう意味では、自身のエンプロイアビリティ(employability=雇われる力)を上げることは重要と言えるでしょう。

2-3 気をつけるべき転職エージェント(キャリアアドバイザー)

妙に入社日を前倒しするようにすすめてくるエージェントがいますが、これには注意してください。
「採用企業の要望だから」と言いつつ、実はエージェント側の都合であるケースが少なくないのです。

ガチガチにKPIで管理されている人材紹介会社だと、

・今月何名入社したか
・登録面談から入社までのリードタイムはどの程度短いか

といった数値目標に追い立てられており、採用企業の要望と言いつつ、実はその紹介会社内の事情、というより自身の業績のために急かしている背景があるのです。

採用企業がきちんとした会社であればあるほど、引継ぎをしっかり進め、現職とも良好な関係を維持して辞めてきてほしいという考えを持っています。

あまりにエージェントが急かしてくるときは、注意することをおすすめします。

転職活動を終えても、休む暇はありません。
入社後、慌てなくて済むように前もって準備を進めてください。
では、転職先への入社後は何に気をつければよいのか?
その点は、次の章でお話しします。

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