内定先企業について、以下の観点でレビューすることを進めてください。
(1) 内定通知書の確認ポイント
1-1 給与・報酬
ここで言う「給与・報酬」のうち「報酬」とは、例えば家賃が会社持ちであるかなど、直接金銭での支給はされないが、実質金銭的な報酬になるものを指します。ちなみに、大手外資金融企業のエグゼクティブだと、秘書がプライベートの世話まですることもあります(家族を日本に呼び寄せる手続きを行う、プライベートのゴルフのセッティングなど)。こういったものも実は報酬なのでしょうね。 さて、そんな雲の上の世界は置いておいて、給与・報酬をチェックする観点は、以下の4つとなります。
①その会社の人事等級上、妥当なレベルに位置づけられているか
②市場価格と比較して乖離(かいり)がないか
③個人的事情が考慮されているか
④給与・報酬の交渉を行うことのリスク
本来、転職先について①→②→③の順で検討・議論していくべきなのですが、③から入る方が少なくありません。
「自分はもともとMRとして年収700万円をもらっていたから、未経験のCRAでも年収700万円を希望する」
といった感じです。
こういう方には、
「MR未経験で年収700万のCRAが、あなたと同じ年収700万でMRとして採用されたら納得感ありますか?」
と筆者は伝えていますが、その事実に理解はできてもなかなか納得はできないようです。
①その会社の人事等級上、妥当なレベルに位置付けられているか
さて、本質は①です。報酬水準をチェックする前に、まず自身の経験・スキルなどが正当に評価され、適切な等級(グレード)に位置づけられているかが重要です。多くの人事制度は、その等級に対し報酬水準が連動しているので、等級が適切であれば、いったんはその会社はあなたを適正に評価してくださっているということです。
ただ、それでもあまりに報酬水準が低く、内定受諾に踏み切れないのであれば、その次に②の市場価格との比較をしてください。
現職で実績を出しているのであれば、現職の報酬(=市場価格)から
「給与は(大幅には)下げたくない」
「経験職種での応募なのだから、年収が上がらなければ意味がない」
と主張できるわけです。
③個人的事情が考慮されているか
個人的事情については、①②のような理詰め(=仕事での成果に対する報酬の妥当性)の議論をしっかりしたうえで、その後に提案するようにしましょう。最初から個人的事情を持ちだすと、転職先の企業から「顧客への価値提供や成果に対し対価を得る意識が低い人である」というマイナスの印象を与えてしまいます。
なお、個人的事情とは、「今回の転職で東京に出てくることになり、家賃や保育園の費用の上昇を考えると、どんなに下がっても、年収で〇円より下がってしまうと、生活が厳しい」といったものです。
選考過程、特に面接で「この人は高い成果を出してくれる!ぜひうちに来てほしい」という評価を得られていれば、相談に応じてくださる場合があります。
④給与・報酬の交渉を行うことのリスク
ただ、どんなに理詰めで交渉をしても、この③の交渉が不調に終わる可能性は常にあります。交渉が決裂した場合、内定を辞退せざるを得なくなったり、採用企業から「そんなに希望が高いのであれば来なくてよい」と言われる状況に陥るリスクもあることはご理解ください。
特に成果に無関係な③の交渉をする場合、そういったリスクをどこまで許容するかを常に考えながら進める必要があります。
それから、等級との関係で言えば、通常報酬が上がれば等級も上がります。
すなわち、あなたの転職先での期待値が上がるわけです。そのため、自分自身の実力はその期待値に対し妥当かどうかもよく考えて転職先と交渉をしてください。条件交渉で給与が上がったはいいが、自身の実力から乖離した等級に位置付けられ、入社後、期待される成果が出せないということになっては元も子もありません。
1-2 法的に明示すべき項目
労働基準法 第15条には、勤務先の労働条件においてどういった事項を提示すべきかが定められています。転職先企業についても、
①法的項目の網羅性
②記載項目の内容面での法定基準への合致度
こちらの2つをチェックする必要があります。
①②が不十分であったり、不明瞭であれば、ぜひ採用企業に問い合わせましょう。きちんとした会社であれば、回答をいただけるはずです。
労働条件の明示が疎かな会社は、そもそも事業や経営全体の運営が無茶苦茶な傾向があります。
(2) 条件交渉のタイミング
では、条件交渉のタイミングは、いつがよいのでしょうか。一般的には交渉を行うタイミングは内定後です。ただ、正式な内定を出す前に、条件のすり合わせを求めてくる企業もあるので、タイミングはよく見極める必要があります。交渉するタイミングによっては、転職先企業によくない印象を与えてしまいます。
ただし、年収の交渉をする場合、説得力のある理由を述べなければなりません。根拠がなければ採用企業側も社内を説得できないからです。
ですので、自分の主張だけを押し通さずに、転職先企業の考えを十分に聞くことも大切です。そのポイントは「(1)内定通知書の確認ポイント」を再度確認してください。そして、何よりも入社希望は強いことを伝えつつ、謙虚な姿勢で交渉を行いましょう。
なお、自分では交渉が上手くできる気がしない、余計なことを話してしまうかもと考える人は転職エージェント(キャリアアドバイザー)にお願いするのも一つの手です。もちろん、私たち(CCP)もしっかりとお手伝いさせて頂きます。
これから働く会社なので、お互いにクリアな環境で働けるようにしたいですよね。
以上、内定通知書を受け取った後の条件交渉のポイントをご説明しました。
しかし、このような転職先企業との交渉のロジックを理解することと、個人で交渉することはまた別物のようです。
そのため、人材紹介会社を有効活用すべきなのです。
人材紹介会社のキャリアアドバイザーは、転職先企業と自分との間に入って確認・調整・交渉をしてくれるので、利用価値はあるかと思います。
とはいえ、企業の報酬制度や労働法に詳しいキャリアアドバイザーはそう多くないのが現状です。
実際に交渉ができる知識や経験があるのかは、人材紹介会社やキャリアアドバイザーの見極めポイントとなるでしょう。
(3)内定辞退をする場合
複数の企業から内定を頂いた場合や条件が合わなかった場合など、内定を辞退しなければならない場面が出てきます。では、内定辞退の旨をどのように伝えればいいのか、内定辞退をしたことでトラブルにならないか不安な方もいるのではないでしょうか。内定を円滑に辞退をするための基本とマナーをご紹介いたします。
まず、入社したい企業の内定を受諾してから、内定辞退をしたい企業に断りの連絡をします。連絡方法はメールでも電話でも問題はありません。電話で連絡する際は、メールで電話可能の時間を伺っておくといいでしょう。合わせてメールも送ることで「聞いてない」といったようなトラブルを回避することができます。
そして、内定辞退することとなったら、できるだけ早く辞退の連絡をしましょう。採用企業はあなたの内定承諾を待つ間、他の候補者を待たせていることになります。あなたが早く辞退すれば、採用企業は他の選考中の候補者の選考を進められるからです。
なお、他の選考の結果通知を頂いてから、返事をしたい場合は内定承諾の回答期限をお願いできる場合もあります。
最後に、内定辞退の理由はどう伝えるべきか悩んでしまう方が多いかと思います。構成としては、内定に対するお礼と述べ、辞退したい旨、内定辞退のお詫び、辞退理由を書き、結びに続けます。
メールで送る際は件名に「内定辞退/氏名」を入れることでメールボックス一覧で確認した際に分かりやすく、見落としされないようにすることも重要です。
また、辞退理由は特に丁寧に書くことを薦めます。転職活動を同じ業種で行っている際、転職後に辞退した会社の方と仕事で関わる場合があったり、次の転職の際にもう一度受ける可能性もあるので、「辞退は残念だが、きちんとした方だな」と思っていただけるようにしておきたいものです。
もし、自分で辞退の連絡するのが不安であれば、転職エージェントに頼るのも一つの手段です。