*インタビュー実施日:2021年9月16日
※インタビューは緊急事態宣言中のためリモートで行いました。
好業績を支える多数の製薬メーカーとの優先契約
吉原:本日はお時間をありがとうございます。CRA経験者に、御社の魅力が伝わるよう、色々とお伺いさせていただくとともに、御社がどういう人材が欲しいかということもお話いただければと思います。
さて、イーピーエスグループとしては700億円という売り上げに近づいて、全体的に業績も好調のようなのです。そのなかでもCRAが所属するCRO事業あるいはモニタリング関連事業のご状況はいかがでしょうか?
滝口:はい、コロナの影響があったにもかかわらず好調なのですが、その要因としては製薬メーカーと優先契約*1を多数締結させていただいているということが大きく寄与しています。
吉原:私の理解ですと、その優先契約ですが、元々は大手グローバルCROのビジネスモデルで、以前はその大手グローバルCROが独占していたイメージです。そこに御社が割って入っていける、さらには多数の優先契約を獲得できている要因はどういったところにあるのでしょうか?
滝口:やはり我々の品質というところを評価いただいていると聞いております。日本という、欧米とは違う医療環境、治験環境にある日本の臨床試験に関しては、その日本の環境にあった丁寧なサポートができるイーピーエスにということで、個々の案件単位ではなく優先契約に結び付くケースが増えるという状況になっています。
なかでも外資メガファーマとの優先契約が多いのですが、外資メガファーマですと、日本のブランチがしっかりあって権限を持っており、日本の状況をよく把握されています。そうすると、日本では、グローバルで決めたグローバルCROと契約するのではなく、日本の状況にあったCROをブランチ独自に選定するという形を取られており、その結果、ありがたいことに弊社を選んでいただいているという状況になっております。
吉原:特にグローバルファーマですと、CROの選定基準に自社と同様にグローバルに拠点があるかというのが、選定要件の一つという印象があります。そこから優先契約はグローバルCROが選ばれる傾向にあるわけですが、にもかかわらず御社が優先契約を多数持っているというのは、相当にサービスの品質が高いということですね。
滝口:おっしゃるとおりで、外資CROに案件を取られてしまって厳しい状況というのは経験しました。そこから揺り戻しがあったわけですが、最近2回目の揺り戻しが起きている状況です。
吉原:揺り戻しとおっしゃいましたが、その要因は?
滝口:数年前に、製薬メーカーのグローバル本社の方で優先契約を行い、その結果日本も含めてグローバルCROに案件が流れがちという状況があり、弊社もその影響は受けたというのが正直なところです。ただ、グローバルCROは時に効率性を過度に求めるところがあるようで、品質面も重視する製薬メーカーは、グローバルファーマであっても再度弊社を選んでくださったという経緯があります。
吉原:いま優先契約は何社と契約されているのですか?
滝口:臨床開発事業本部としては20社以上になります。
吉原:そんなにあるのですね。正直申し上げて、そこまでとは思いませんでした。凄いですね!
滝口:改めて見たときに結構あるなと思いました。
*1:「優先契約」・・・製薬メーカー等依頼者側でアウトソーシング案件が出た際、優先的に特定のCROに依頼をするという契約。一方、CRO側は契約に基づく一定量のリソースをその製薬メーカー用に確保し、タイムリーかつ柔軟にサービスを提供する責任を持つ。
オンコロジー領域での実績、希少疾患への注力
吉原:次に違う角度から御社の強みをお聞かせください。
まず、御社はオンコロジー領域に強みをお持ちですね。もう7~8年前になるのですが、オンコロジーに強い某製薬メーカーのオンコロジー臨床開発部門の部長さんの転職を支援させていただいた際、ひょんなことからどこのCROをよく利用するかという話になったところ、
「イーピーエスさんのオンコロジー部門は本当に素晴らしくてずっと使っていました。リーダーだけでなく、CRAの方もよくオンコロジーのことをわかっていて、全てを説明しなくてもオンコロジー特有のポイントを押さえてモニタリングをしてくださる」
とおっしゃっていました。
そんな以前からオンコロジー領域で強みを得られた背景や、オンコロジー関連のトピックスがあれば教えていただいてよろしいでしょうか
滝口:かなり以前からオンコロジーが今後ニーズとして増えていくだろうという分析のもと、積極的にオンコロジー領域の試験を取りに行っていました。その積み重ねでこの領域でのノウハウを蓄積し、そのノウハウを元に専門性を持ったCRAを増やしてきました。その結果、実績とリソースの厚さというところで、さらにオンコロジーの試験をいただくという好循環になっています。
オンコロジー関連で優先契約をいただいている製薬メーカーもあります。
吉原:それで、7~8年前、2013年頃にはオンコロジーでの優位性を確立できていたのですね。
滝口:お陰様で会社全体でもオンコロジーが増えているなかで、特にモニタリング業務におけるオンコロジーの比率は、今や5割から6割近くを占めています。
吉原:そうやって蓄積したノウハウはどのようにオンコロジーCRAの育成に活用されるのですか? どうやってオンコロジーCRAを増やしているのですか?
滝口:Oncology Academyを作り、1年間かけて受講していただく講座を開催しています。
また、オンコロジーの経験者を増やしていくというところでは、以前はオンコロジーの専門部署があったのですが、現在は専門部署を廃止し、どの部署においてもCRAがオンコロジーの試験に携われるようにして、オンコロジーをやりたいという方が組織の壁に阻まれずにオンコロジーの試験を担当できるようにして、オンコロジーCRAを増やしていくようしています。
吉原:そういう取り組みをされていたのですね。ちなみにOncology Academyはいつ頃、立ち上げたのでしょうか。
滝口:Oncology Academyに関してはそんなに前ではなくて、3年前くらいからなんです。
ただ、以前はオンコロジー専門の部署があったので、その専門部署でオンコロジー試験の実績やノウハウを積み、あわせて研修も実施してきたという蓄積があり、そういったノウハウを集約してOncology Academyという形になりました。
吉原:そのOncology Academyの講座数というか、例えばそれを全部受け切ると何時間くらいになりますか?
滝口:大枠は、基礎編、疾患編、外部講師編という構成になっています。基礎編がだいたい6コマ、疾患編が5コマ、外部講師編は5コマと、これらの内容を1年間通して受講してもらいます。ですので、1年かけて全てのテーマに参加できる人が参加できるものとしています。
ただ、全ての講座に参加できるかわからない人もいるので、そういった場合には単発でeラーニング化したものや、外部講師の講座にリモートで参加することもできるようにしています。
吉原:そうやってオンコロジーCRAが増えるような仕組みを作られているのですね。ちなみに外部講師というのは、オンコロジー専門の医師もいらっしゃるのですか?
滝口:はい
吉原:かなり充実しているのですね。オンコロジーをやりたい人には非常に魅力的な内容だなとよく理解できました。
吉原:オンコロジー以外で注力している疾患領域、昨今ですと細胞治療や免疫療法といった技術領域とかもあると思うのですが、そういったところではいかがでしょう?
希少疾患はかなり注力しているとお伺いしているのですが
滝口:希少疾患や再生医療などの試験に関しては、特に注力して情報を集め提案の機会を得るようにしています。そうして、意図的に難易度の高い案件の受注を増やすようにしています。というのは、プライマリー領域に比べてCRAとしても力がつくし、今後市場のニーズとして増えていく領域なので、CRAのキャリアにとっても箔がつくだろうという考えからです。
吉原:それは、非常にCRA個人のキャリアに配慮した考え方のように聞こえます。
依頼者である個々の製薬メーカーや、業務を受託する側の個々のCROの考え次第ではあると思いますが、ここ数年、CRAはより効率性が求められる傾向があるように思います。数値的なKPIを設定し、より数をこなすことが求められる印象です。そして、依頼契約手続き等の業務を専門の部署に移管するなど、CRAの業務を細分化することで、細分化されたなかでの効率性を徹底的に追求しているようですね。そのため、CRAの仕事がある意味オペレーショナルになっているなか、御社はそれと反対を行っているように見えます。
滝口:我々も効率性は求められますし、効率性も含めた生産性はもちろん重視しています。そのために業務を細分化していくというのも一つのやり方ではあるのかなとは思うのですけれど、切り分けてしまうとどうしてもCRAとして部分的なことしか経験がない人材になってしまいます。そうすると、その人がキャリアアップしていこうとしたとき、それこそ製薬メーカー側に転職しようとしたとき、「部分的にしか経験がないよね」とマイナスになってしまったり、医療機関とのやり取りで問い合わせを受けたときに「そこは別の担当で私はわかりません」というのでは良いモニタリングができません。ですので、弊社では専門性を持たせるために、オンコロジーや希少疾患などの難易度の高い試験を豊富に揃えるという面と、モニタリング業務を切り分けずにトータルに経験できる環境を維持しています。効率性の追求という意味では、例えば内勤職の人材に事務作業を割り振るようしています。
吉原:御社が外資製薬メーカーから優先契約を相談される要因である品質の高さの源は、そのあたりにあるのですね。すごくよくわかりました。
優先契約、オンコロジー、希少疾患とお伺いしましたが、それ以外に御社の強みやトピックスなどがあればお伺いしてもよろしいでしょうか?
滝口:バーチャル治験にも積極的に取り組んでおり、「Virtual Go*1」構想というものを発表させていただいています。
「CRAが施設へ訪問しなくてもよいバーチャル」と「被験者が施設に来院しなくてもよいバーチャル」の2つの観点で、バーチャル治験のプラットフォームづくりを進めています。現在、パイロット段階ですが、今後拡大していきたいと思っています。
吉原:それは面白そうですね! Virtual Goについては後ほどぜひ詳しく聞かせてください。
*1:「Virtual Go」・・・下記、イーピーエスの公表情報を参照。
https://www.eps.co.jp/ja/virtual-go.php
拡大する受注を踏まえた積極的な経験CRA採用
吉原:次に本題である、御社の採用状況や、今後のCRA経験者の採用方針等をお伺いさせてください。
現状、どういうレベルのCRAを、何名程度募集をお考えでしょうか。
滝口:求める基準としてはジュニアからリーダークラスまで幅広く採用させて頂きたいと思って募集をかけています。
実務経験を2、3年以上持っていらっしゃる方というのが目安ですが、本質的には「自立してモニタリングができる」という基準で選考させていただいています。ですので、1年の経験でも、「自立してモニタリングができる」という方であれば、ぜひ応募していただきたいと考えています。経験・スキル以外では、どういった姿勢で仕事に向き合えるかといった、人となりといった面も大切にしております。
10月からが新事業年度となるのですが、恐らく50名超の採用計画になる見通しです。ただ、お陰様で受注、業績とも好調なため、あわせて中途未経験者についても少しずつ増やしていこうと思って計画を立てているところです。
吉原:リーダークラスというのはモニタリングチームのリーダーということでしょうか。また、CRAとしての経験年数やおおよその年齢目安はどのくらいのイメージでしょうか。
滝口:年齢にはあまりこだわりはありませんが、実務経験でいうと5年から7年くらいの経験が一般的です。早いと5年くらいでモニタリングリーダー(以下、ML)になっていただくケースも、実際あります。ですので、結果的には30代前半の方が多いのかなという印象です。
吉原:MLの役割ですが、外資CROで言うリードCRA、即ち施設を持ってモニタリングをしつつ、リーダーのサポートや個々のCRAのサポートも担うというものでしょうか。あるいは、そうではなくて施設は持たず完全にプロジェクトの品質や進捗の管理、CRAのサポートに専念できるポジションなのでしょうか。
滝口:どちらかというと後者になります。基本的にはMLには施設を持たせていませんが、希少疾患など試験規模が小さくなっているので、MLも施設を持つことはありえます。
吉原:思ったより施設を持たないリーダーに早く昇格できるのですね! 正直、御社は昇格が早くないというイメージを持っていたので。
意識されて早くあげるようにされているのでしょうか?
滝口:おっしゃる通りです。よく比較されるのですが某内資CROですと、リーダーになれるのがもっと先になるみたいなのですが、弊社ではリーダーになれるチャンスは以前より早まったと思います。
例えば、人事評価制度上の管理職にならなくても、プロジェクトのリーダーを担える仕組みになっているので、割と早い段階でMLになれるのです。
吉原:人事制度上でもそういう工夫をされているということですね。
CRAとしての経験を積み、リーダー候補になると、プロジェクトマネジメント研修など、リーダーを担うための研修などを徐々に受けてもらうようなこともしているのですか?
滝口:プロジェクトマネジメントなどの、ベーシックなビジネススキルや知識については、外部の研修会社のシステムを導入しており、そのシステムにリストされている研修が200講座程度あるのですが、それを自由に受けることができます。「自由に」というのは、以前は半期に2~3講座と上限を決めていたのですが、現在は業務に差し支えなければいくつでも受講してよいということに変えました。ですので、例えば管理職やリーダーを目指したいと思っていらっしゃれば、マネジメント研修など関連する研修を自由に受けて自分の知識をつけていただくことができます。
また、管理職研修なども定期的に実施しておりますので、そこで知識やスキルを高めていただくこともできます。
吉原:再度になりますが、正直御社でリーダーになるにはもっと時間がかかると思っておりました。しかし、お話いただいたようなかたちでかなり早くリーダーになれるように取り組まれているのだなと、認識を改めさせていただきました。
滝口:実務の中でもMLを目指すにあたっては、まずリードCRAとしてアサインし、チームのマネジメントの補佐をさせるなかで、経験を通じてもステップアップしていただくようしています。リードCRAを目指すにあたっては3年目くらいまでに後輩指導の役割を与えるなどして、実務の中で自然にマネジメントの経験が積めるようにしています。
吉原:逆にいうとラインのマネージャーやMLがそういった経験を積ませるようにアサインを設計されているということなんですね。
滝口:さようです。
吉原:次にCRA経験者はどこのCROも募集されており、経験CRAとして求められる経験値やスキルといった面では、そう大きく変わりません。そのなかで御社ではマインドセットなど、経験やスキル以外の側面でこういった人材が来てほしいといった、御社ならではの要件、人材像はどういったところですか?
滝口:そうですね、
- 自立して、意志を持って動ける
- ご自身の持っているOncologyやCNS、Global等のキャリアを伸ばしていきたい、活用していきたいという意欲を持っている
- 長期的なキャリアを重視して考えられる
- グローバル対応力やプロジェクトデザイン力がある
といったことを持ち合わせている方を求めています。
経験CRAのポジションでは、即戦力で活躍いただける方を前提と考えており、順当に考えればCRAの次はリーダー、そしてラインマネージャーということになるのですが、皆が将来リーダーやラインマネージャーを目指すとも限らないので、リーダー以外のキャリア、モニタリング関連業務以外のキャリアも含め、ご自身の長期的なキャリアをきちんと考えようと思っている方にいらっしゃって欲しいですね。何を目指していきたいか、そのためにはどういった経験を積み、どういった知識をつけていく必要があるのかということを、自らも考え、自らチャンスを掴みにいくようなアクションを起こせる人ですね。
それから、加速するグローバル化に対応すべく、グローバルコミュニケーション力をお持ちの方にも期待しています。グローバルで活躍していくためには、言語としての英語力ということではなく、ロジカルに話す、積極的に自分の意見を伝えるといった、日本人特有の謙虚さから脱却するようなマインドセットに変える必要があると考えています。そんなマインドを持った、グローバルリーダーを担える方も弊社では求めています。また、CRO・CRAという枠にとらわれずに、アイデアを具体的な企画として描けるプロジェクトデザイン力のある方にも、更なる事業発展のために力を貸していただきたいです。
吉原:長期的なキャリアを自ら考え、実現しようとする人材ということですね。
そうすると今CRAで、MLやモニタリング部門でのラインマネージャーを目指す方はもちろん、モニタリングという範囲を超えて臨床開発パーソンを目指したい、さらには会社や事業自体を大きく変革・発展させていくようなビジネスパーソンを目指したいといった方がいらっしゃった場合、そういった方を後押しする仕組やリソースはどういったものがあるのでしょうか?
滝口:まず、弊社のなかにはプランニングや横串でのプロジェクトマネジメントを行う部署や、全社的な企画推進機能を担う企画推進部門があるなど、そういったキャリアパスを幅広く準備しています。
次に、社内公募制度をしっかり運用しております。「しっかり」とは、公募制度で社内ポジションに応募するにあたって上長の許可は必要なく、公募ポジションに対し自分がその条件を満たしているのであれば応募ができ、合格するまでは今いる部署の中で異動希望を出していることはわからない状態なので、チャレンジしやすくなっています。
また、人事制度上だけでもこれまでは年に5回、他にも業務状況に応じてフレキシブルに上司との面談の機会があり、キャリアの相談を行うことが可能ですし、相談に対し上長からこういったものを目指してみるのはどうだろうか? とアドバイスを受けることが可能です。そうやって自分のキャリアを見つめ直す機会も作っております。
吉原:御社ですと、グループ会社を含めるとかなり様々な業種や職種があると思うのですが、グループ会社のポジションに異動というのも可能なのでしょうか?
滝口:おっしゃるとおりです。丁度今年から、グループ人財公募制度が立ち上がりまして、これも社内のイントラにアクセスすると募集ポジションが見られる仕組みになっています。
吉原:それは面白いですね。
先程お話が出たVirtual Goのような取り組みに、CRAと並行して、忙しくなってもいいので、そういう特別プロジェクトに参加したいと思った場合、参画できるのですか?
滝口:もちろんそういった推進チームに参画することも可能です。
弊社では転職を検討されている求職者とのカジュアル面談も積極的に実施していて、そこに現場で活躍している社員が参加することも多いのですが、先日面談に一緒に入った社員がたまたまVirtual Goの推進チームの一員でした。MLをやっている女性で、以前から新しい取り組みにも興味があるという話をしていたそうで、そういう姿勢であったり、新しいことへの取り組みへの積極性から、上長の方から声をかけてあげて、推進チームに参加されたとのことでした。
このようにやりたいという姿勢を引き上げてくれる上司もたくさんいるので、ML業務をやりながらで大変だとは思うのですけれど、そういったチャレンジをサポートする体制があります。
吉原:モニタリング部門でリーダーや管理職を目指す以外にも、相当に多くのキャリアの可能性があるのですね。一つの治験薬を開発するという仕事以外に、イーピーエスグループのリソースを使って、例えばVirtual Goのように、治験の仕組みを変えていくような仕事もできるなど、様々なキャリアを想定できるということですね。
話は変わりますが、現在「オンコロジー試験」と「グローバル試験」へのアサイン確約でCRA経験者を募集されていますね。背景としてはやはり、オンコロジーの案件が多いこと、グローバルファーマとの優先契約に基づくグローバル試験の案件が多いという理解でよろしいですかね?
滝口:はい。もちろんそこもあります。
一方、応募してくださる方の視点で見ると、普段、採用面接をさせていただくなかで、今いらっしゃる会社での受託案件についての不安をよく伺います。受託案件数の問題もありますが、オンコロジー試験やグローバル試験を経験したいけれど、なかなか現職でそういった案件が多くなく、希望するプロジェクトへの異動が叶わないといった現職への不満・懸念をお持ちです。そういった方の期待に応えられるよう、オンコロジー試験やグローバル試験へのアサイン確約の求人を準備した次第です。
吉原:御社ニーズが起点ではなく、求職者ニーズを起点に準備された求人、ということですね。
滝口:そうですね。既存社員の異動希望とのバランスを考える必要はあるのですが、現状は特に採用枠は設けておりませんので、多数の方を受け入れられる状況です。お陰様で優先契約が増えているといった経緯もあり、オンコロジー試験やグローバル試験も多数あるので、求職者の方のご希望には添えると思います。
応募者がイーピーエスを選んだ理由
吉原:次に応募者としてのCRA経験者視点から、御社について伺います。
CRA経験者で、御社を選ばれた方はどういった点が決め手だったのでしょうか? CRA経験者であれば、恐らく製薬メーカーや複数のCROを受けられたなかで御社を選ばれたと思うので。
滝口:大きくは、「キャリアアップ・キャアリア形成ができる」というところと、「社風・人」で選んでいただいた方が多かったかなと思います。
キャリアの幅を広げられる案件や機会が豊富でCRAとして成長できるというところであったり、オンコロジーの経験が積めるというところであったりといった点で弊社に決めてくださった方は多いと思います。
また、若いうちにリーダーとしてのチャンスを得られることはもちろん、長い目で見てモニタリング以外のキャリアを考えた時に、幅広い職種の選択肢があり、そこへの期待をもって選んでいただけているという状況になっています。
次に、面接や面談で弊社の社員と会っていただいて、そこでお話をしていく過程で、「イーピーエスは自分を見て話を聞いてくれる」という感想をお持ち頂き、社風や人の魅力を感じてくださって弊社を選んでくれているというところも理由としてあげられると思います。これまでの経験から、仕事は一人で行うものではなくチームワークでなすものだと実感されていて、弊社のチームで成果を出す社風に共感される方が多いです。
吉原:おそらく外資との比較は凄く大きいのかなと思うのですが、いかがでしょうか。
先程も業務が細分化されるという話が出ましたが、CROに限らず外資は特にその傾向が強いですね。業務の細分化の結果、自身の役割範囲外のことに良くも悪くも関与しなくていいであるとか、効率性の過度の追求から目標となる数字さえあげていればそこに至る経緯や社員の思いはあまり拾われないなど、コミュニケーションに時間をかけることさえ効率性の観点から考えている会社もあるようです。その良し悪しは別として、そういう環境があわないと感じる方が、御社の環境を選ぶというところはあるのではないでしょうか。
滝口:そうですね、それはあると思います。弊社の場合、「チームで成果を出す」ということを大切にしており、結果互いに仲間の話を聞くという風土は根付いています。そういうところは外資との違いだと思います。
吉原:そうすると、採用された方で外資CROから移られてきた方も多いのですか?
滝口:そうですね。極端に多いというわけではないですが。
吉原:外資CROでは、CRAでもかなりの年収の方がいらっしゃいますが、給与面では同等のオファーを提示されるのですか?
滝口:もちろんその方へのご評価次第で様々ですが、維持できている方もいらっしゃいますが、正直、若干下がる方もいらっしゃいます。
ただ、弊社でのキャリアの幅の広さや、「人」の面でご評価いただくのはもちろん、忙しすぎて知識・スキルを磨く時間を作れないから働き方を変えたい、長期的に落ち着いて仕事をしていきたい、キャリアを構築していきたいという方は、それでも弊社を選んでくださるようです。
吉原:給与が高ければ過度に効率性を追求する仕事のスタイルでもいいということではなくて、チームでフォローしながら成果を出せるとか、良いキャリア形成が積めるとか、そういったところを重視する方が、御社を選ばれるのですね。
滝口:そうですね
吉原:御社の強みの観点ではいかがでしょうか。御社の専門性の高さ、先ほどおっしゃっていたオンコロジーや希少疾患の試験を経験し、よりレベルの高いCRAを目指したいという思いで御社を選択する方も多いのでしょうか。
滝口:ありがたいことに、そういった弊社の方向性に共感してくださる方も多くいらっしゃいます。「オンコロジーやりたい」など、ご希望をおっしゃってくださる方はもちろん、面接のなかで弊社からその方のご希望をお伺いし、「実はオンコロジーに興味がある、いずれはやってみたい」ということであれば、その方にはオンコロジー確約でお話しさせていただくといったフォローをさせていただいたりもしております。
吉原:実は過去、御社でCRAをされていた方数名の、製薬メーカーへの転職をご支援さえて頂いたことがあります。驚いたのは、GCPに沿ったモニタリングのスキルが高いということだけでなく、皆さん、サイエンス面でも非常に優秀だったということです。ご推薦させていただいた製薬メーカーからも、その点に関し高く評価しているとのフィードバックをいただくことが多く、本日伺ったお話から、その背景がよくわかりました。
また、専門性を高めるという観点で御社に魅力を感じる方は多いということも、納得です。
ただ、御社からすると、手塩にかけて育成した優秀なCRAが、優秀ゆえ製薬メーカーに移っていってしまうというジレンマになりますよね?
滝口:そうですね。そういう方がいらっしゃるということは認識しております。
我々も人事という立場では本当に残念なことはあります。
ただ、弊社で得た知識や経験を製薬メーカー側でさらに発揮していただき、一緒に日本の臨床試験や医療への貢献ができるということを考え、快く送り出しています。
吉原:御社が効率性に過度に偏らず、専門性も高いCRAを育てられているからこそ製薬メーカーに行ってしまうというのは、ある意味御社のCRA育成の正しさが証明されているのではないかなと感じました。
新しいイーピーエス
吉原:話は変わりますが、世間が持っている御社に対するイメージに対し、実は違うんだといったことはありますか? 今日お伺いしたお話から、私自身、優先契約数の多さ、昇進のスピード感など、御社に対するイメージがかなり変わりました。
滝口:まさに、今の弊社の魅力をきちんと伝えていくというところは課題だと感じています。
というのは、どうしても業界にいらっしゃる方なら
「イーピーエスのことは知っているよ」
というちょっとした先入観お持ちであることが多いと感じるからです。
例えば、このくらいの規模になってきて、良い意味で大手CROとして認知されている一方、そこに入っていくと埋もれてしまうんじゃないかと懸念され、小さい会社を選ぶという方もいらっしゃいます。
しかしながら、治験CRAの部署で見ると、新年度で変わるかもしれませんが、東京で6部署、大阪と名古屋で各1部署の体制をとっております。その各部署で独立採算制をとっているので、会社としてはそれなりに大きくなりましたが、部署の中でチームを作ってその中で昇進・昇格をさせていくので、思ったより埋れるということはないですし、部署のなかで部長なり課長が一人一人のCRAに目配せできるマネジメント体制を敷いているので、ちゃんと頑張っている人を拾い上げることができています。ですので埋もれてしまうという心配はないのです。
それから、誤解というほどではないですけれども、どうしても
「イーピーエスは、真面目で誠実な人が多い分、コツコツと仕事をするおとなしめの人が多い」
という世間的な認知になってしまっていると感じています。実際真面目な人が多いのは事実ですが、実は新しい取り組み、先進的な取組に積極的な人間もいます。
例えば、現社長の佐々は元々MR出身で、そこからCRAとして入ってきて、モニタリング部門で活躍した後、データサイエンス系の部門のマネジメントを担うなど、恐らく他社では珍しいキャリアを経て社長に就任しました。おとなしく1つのことにコツコツというものとは良い意味で違ったキャラクター、側面を持った人間だったりもします。
また、その前の社長の田中(尚)が、既存の枠にとらわれず新しいことに取り組む姿勢が強かったので、その頃から良い意味で、「新しいことをやるんだ」という感じが特に強くなってきましたね。
吉原:やはりそうなのですね。是非ここはお伝えするようにします。
「やはり」というのは、一つは、少し前になりますが、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)が手掛ける希少疾患データベースの構築に御社が関わっているというニュースを見たときですね。確か田中様が社長の頃でしたね。
佐々様が社長になってからの直近の新しい取り組みですと、前出のVirtual go構想ですね。各CROが治験のVirtual化を推進していますが、Virtual Go構想は治験をトータルにバーチャル化することを目指すという強いメッセージを、他社に先駆けて発信したという印象で、内容も発信の仕方も、「真面目で誠実な人が多い分、おとなしめなイーピーエス」という私の御社に対する間違った認知を覆すものでした(笑)。
バーチャル治験のインフラ整備 ~Virtual go構想~
吉原:そのVirtual Goはモニタリング、即ちCRAにも直接関連するのでぜひ聞かせてください。先程、「CRAが施設へ訪問しなくてよいバーチャル」「被験者が施設に来院しなくてもよいバーチャル」の2つが大きな柱とのことでしたが、概要など、もう少し詳しく取り組みをお教えいただけないでしょうか。
滝口:はい。二面の部分でのバーチャルをやっています。
「CRAが施設へ訪問しなくてもよいバーチャル」では、匿名化された電子カルテ情報への遠隔アクセス、DDC(電子ワークシート等)、その他デバイスの活用などを進めます。
「被験者が施設に来院しなくてもよいバーチャル」では、eConsentをはじめとしたオンライン診療、治験薬配送、検体回収、訪問看護など、来院しなくても治験に参加できるようにしていくことの実現を目指しています。
これらは弊社のみではできないことなので、例えば、医療機関部分に関してはグループ会社で国内最大のSMOであるEP綜合と連携します。
また、デバイスやシステム等、被験者が利用するものが増えるので、様々な問い合わせが発生することが想定されます。その点で、これもグループ会社で、医薬関連で国内最大規模のコールセンターを持っているEPファーマーラインで一括して受けることによって、問い合わせの煩雑さをなくすということも行います。
このように、イーピーエスグループのリソースを最大限活用できることが弊社の強みでもあるのですが、この取り組みはグループだけでは完結できないので、例えば、オンライン診療に関しては、株式会社MICINと提携させていただくなど、グループに閉じず、日本の治験インフラを革新するような取り組みにしたいと思っています。
そのため、これから様々なことを企画し、実装していく必要があり、セミナーを定期的に開催させていただいていて我々も含めて、まだまだ勉強していかなければいけない段階ではあります。
ただ、既にパイロットスタディは始まっており、試行錯誤を重ねながらトータルなバーチャル試験の仕組み、体制を構築し、日本の治験に大きな貢献をしていきたいと考えています。
吉原:このVirtual Goは、御社が、モニタリングだけではなく、データサイエンスやシステム系にも強いのでこういった取り組みを総合的にできるということなのですよね?
滝口:そうです。
吉原:本当に新しい取り組みですね。滝口様が「イーピーエスは、真面目で誠実な人が多い分、おとなしめの人が多い」という世間の認知を変えたいとおっしゃる意味がよく分かりました。
このような取り組みがあるので、先程お話があったとおり、新しいことをやりたい人はCRAからそういった部署に異動する、あるいはCRAを担いながら、タスクフォースにも参画するなど、今までのモニタリング業務、臨床開発業務以上の取り組みができるということですね。
そうであれば、「新しいことをやりたい」「変革を起こしたい」といった方も、活躍の場があるということですね。
滝口:おっしゃる通りです
■Virtual Go構想図
*イーピーエスの下記websiteから引用
https://www.eps.co.jp/ja/virtual-go.php
今後のビジョン
吉原:私は、前職の人材紹介会社時代も含めて、御社とは長くお付き合いさせていただいているのですが、今日、滝口様のお話を伺い、かなり御社のイメージが変わりました。CRA Career Platformなどを通じて、多くのCRAをはじめとした業界の方に
「イーピーエスのイメージが変わった! 良いね!!」
と思ってもらえるよう、発信していきたいと思います。
最後に、お話しただいた新しい取り組み含め今後の御社、あるいはCRO事業の目指す方向性、ビジョンなどをお教えいただけないでしょうか。
滝口:CROセグメントにおいては、ビジョンとして
「専門サービスを通じて、人々の健康・充実した生活を創出する」
というものを掲げています。
このビジョンのもとで、今はモニタリング業務を中心とする治験関連のCROビジネスが大きく、お客様は製薬メーカーや医療機器メーカーがメインになっています。
そういったビジネスの構造を、例えば医療を超えてヘルスケアの範囲までデータビジネスを拡大していくなど、変えていく、拡張していくことを考えています。そうすると、お客様も、行政/自治体や生命保険会社など、ヘルスケアデータを大量に保有し、活用をお考えのところに広げていくこととなります。
このような新しい取り組みを通じて、
「専門サービスを通じて、人々の健康・充実した生活を創出する」
というビジョンの実現を目指しています。
市場での立ち位置という面では、今グループのシェアとしては16%程度で、国内シェアNo.1になってきたかな? という状況です。これを確固たるNo.1となるべく、5年後までに25%に拡大することを目標としています。
もちろん、品質の維持・向上は大前提ではあるのですが、既存事業の拡大だけでなく新しい事業や取り組みも次々と立ち上がっていきますので、そういったことにも可能性を感じてくださる方に、入社していただきたいと思っています。
吉原:そういう意味でも、御社は治験やPMS、PVといった分野で優位性をお持ちのイメージですが、実は新しい取り組みにも積極的だということもお伝えしていきたいですね。
ぜひ、CRA経験者を始め、業界の方に、御社の新しい一面が浸透するよう発信させていただきます。
本日はありがとうございました。
◆担当コンサルタント inspire株式会社 吉原貴の感想
インタビューにもあるように、イーピーエスで育ったCRAの方は、製薬メーカーからの評価も高く、特にサイエンス面で非常に優秀だという印象を、キャリアコンサルタントとして持っていました。今回のインタビューでは、その理由を知りたいと思っていたのですが、効率性とともに、専門性や品質を重視する風土を伺い、イーピーエスで育ったCRAの方の優秀さの源泉を垣間見れたと思います。 また、「真面目で誠実な人が多い」という社風を維持しつつも、Virtual Goなどの新しい取り組みに見られるように、既存の枠を壊していくような人材も活躍できる風土が強まっていることも、イーピーエスのイメージを変えていくのに十分な情報だと思います。 CRAで入社した後、そういった新しい取り組みに関与できる異動できる制度や実態もあり、CRA経験者にとって、キャリアの可能性が広がる場所だと強く感じました。 |