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2024-06-11 17:27

伝えたいことを正確に伝えるには 4 ~大人数の前での響く「挨拶」~

伝えたいことを正確に伝えるには 4 ~大人数の前での響く「挨拶」~
日常業務において、また業務以外の場面でも、人前で「挨拶」をする場面というのは経験、年齢を重ねるごとに増えてくるものです。本稿では、分かりやすさと説得力を兼ね備えた「挨拶」の作り方を解説します。

Ⅰ.「挨拶」とは

 日常業務において、また業務以外の場面でも、人前で「挨拶」をする場面というのは経験、年齢を重ねるごとに増えてくるものです。例えば、自己紹介から始まり、着任、離任の挨拶、組織やプロジェクトの代表としての挨拶や、業務以外では友人の結婚式等の冠婚葬祭の場面やその他人生の節目となる場面等、社会人として人前で話す機会は徐々に増えてくるでしょう。大人数の前での「挨拶」が苦手という方も多いのではないかと思います。

 しかしこの「挨拶」が、その人の印象や信用に大きくかかわってくることがあるというのも事実です。苦手だからでは済まされない場合もあります。

 ここで「挨拶」とはどのような役割を持ったコミュニケーションなのか整理してみましょう。「挨拶」とは、自身からのメッセージに対して、複数の聞き手に同じような思いを持ってもらいたい、つまりメッセージに共感してもらうことが「挨拶」の役割ではないでしょうか。

 その役割を果たすためには、「挨拶」にはそのメッセージの分かりやすさと説得力が大きなカギとなります。

 

Ⅱ.「挨拶」にとって重要なこととは

 では「挨拶」にとって重要なことについてもう少し考えてみましょう。つまりここでは「挨拶」の分かりやすさと説得力の為には何が重要なのかということに置き換えられます。その点から考えると、以下の3点に注意して組み立てていくことが重要になります。

 

  1. メッセージは明確であるか
  2. 話し手の立場は明確であるか
  3. メッセージに直結し、話し手の立場に則したエピソードの存在

 

 まず、「メッセージは明確であるか」という点です。「挨拶」には初めから目的が存在する場合が多くあります。それは、労いやキックオフ、お祝い、お悔やみ等状況に応じた目的がありますが、しかしこれらは目的でありメッセージとは少し違います。例えば労いの挨拶の場面で、「お疲れ様、ありがとう」を連呼して、具体的な内容に触れない「挨拶」は、あまり響く「挨拶」とは言えないのではないでしょうか。また友人の結婚式の挨拶で、「おめでとう、嬉しいです」しか言わない挨拶も同様です。やはりそこには明確で分かりやすいメッセージを加えたほうが、より多くの共感を得ることに繋がります。具体的には記入例でご紹介いたします。

 次に「話し手の立場は明確であるか」という点についてです。「挨拶」に説得力を持たせるためには、発言者の立場は非常に重要です。この立場の人が話すのなら説得力があるということです。ですから発言者の立場をより明確に伝えることは、「挨拶」に説得力を持たせるためには必要なプロセスです。

これは職位や関係性を示すという意味だけではなく、日常どの様にかかわっているかということや、どのように状況が見えるかといったことも含まれます。例えば、同期入社です、と伝えるより、同期で同じ部署でデスクを並べ日々切磋琢磨している仲です、と言ったほうが、そのあとのエピソードやメッセージの説得力がより増す方向に繋がります。

但し既に話し手の立場が明確であり、あえて明確化する必要性のない場合もあります。その様な時はこの点は無くても問題ないかと思います。

 最後に「メッセージに直結し、話し手の立場に則したエピソードの存在」という点です。前述の2点はこの点を効果的に行うためのものです。説得力がある立場の人が具体的なエピソードを伝え明確なメッセージを伝えることで、より共感を呼ぶ「挨拶」になります。

 エピソードはメッセージを強化します。そしてそのエピソードを伝える側の立場が適正であればあるほど、エピソードの説得力が増し、結果としてより強いメッセージへと繋がっていくのです。

 

Ⅲ.「挨拶」を組み立てる

 ではそれらの点に注意しながら、「挨拶」を組み立ててみましょう。

 

 まず伝えるべきことは、メッセージと話し手の立場の明確化です。言い換えると「自分は何者で、何を伝えたいか」ということです。メッセージを先に伝えることで、これから話す内容の理解度が増し分かりやすくなり、自分の立場を明らかにすることでこれから話す内容の説得力を強化します。それらを後回しにして内容に入ると、メッセージ性が薄く説得力の無い「挨拶」となり、結果として印象に残らないものになってしまいます。最初にこれらをはっきりさせてから話しを進めることで、聞き手の共感を得やすい状況を作ります。

 次に立場に則したエピソードトークを話します。つまりここで話す内容は、自分の立場だから言えるメッセージに直結した具体例ということになります。前段でメッセージを明確にすることでより効果を発揮します。

 そして最後にもう一度メッセージを伝え、エピソードの後に一番伝えたいことを確実に伝えます。

 

 まとめますと、「メッセージと話し手の立場の明確化」→「立場に則したエピソードトーク」→「もう一度メッセージ」の順番です。「挨拶」はこのように組み立てます。

 

Ⅳ.記入例と解説

 

では実際に上記の方法に従って「挨拶」を組み立てていきましょう。

まず状況からご説明します。これは会社の同僚(新郎)の結婚式で友人代表の一人としてお祝いのスピーチをする場面です。ここでは、新郎の会社の同僚代表として、新郎の人間性や魅力等を参列の皆さんに紹介し、広く祝福していただくのが目的となります。

 

では実際の「挨拶」です。

 

「○○家、××家の皆様、この度はご結婚おめでとうございます。私は□□君と同じ△△株式会社の営業部でご一緒させていただいております◇◇と申します。本日は□□君の素晴らしさの一端を同僚として是非とも皆さんにご紹介させていただきたいと思います。□□君はとても積極的で行動力を持った素晴らしい営業マンです。」・・・まずここでは自分はどのような立場で新郎とはどのような関係なのかを明確にしています。そして伝えるべきメッセージ、ここでは「新郎は積極的で行動力のある素晴らしい人だ」という点を伝えたいということを明確にしています。

 

「□□君とは同じ営業部員として、デスクを並べております。先日、私が取引先とのコミュニケーション不足によりちょっとしたミスを犯してしまい、そのことで悩んでおりました。すると□□君は『悩んでいても仕様がないから、まず先方からよく話を聞いてみましょう。その上で上司に相談等を考えてみましょう』と声をかけてくれました。私はその通りにまず先方の話をよく聞き、そこからいろいろと考え行動しました。その結果大事になることなく、取引先と関係改善することが出来ました。□□君はいつも大変積極的で、行動と思考のバランスが素晴らしく、その結果常に売り上げも上位におります。売上という結果だけではなくその仕事に対する姿勢も感服いたします。同期ながら尊敬できる同僚です。またその積極性が、本日このような素晴らしい伴侶を射止めたことにもつながっているのではと、私は確信しております。」・・・ここでは、会社の同僚だからこそ言える、メッセージである「新郎は積極的で行動力のある素晴らしい人だ」に繋がる具体的なエピソードを紹介しています。会社の同僚代表の挨拶であるので、新郎側からは会社での新郎の話をすることが期待されています。例え学生時代の話をたくさん聞いていたとしても、それらの話には触れないようにしましょう。それは学生時代の友人が話すべき話です。自分の立場を正しく理解し、その立場に適した話をすることが大きな説得力に繋がります。

 

「□□君のその積極性と行動力は、仕事は言うに及ばず、家庭を築いていくうえでもきっと大きな力になるのではと思います。□□君、▽▽さん、そしてご両家の皆さん、本日は本当におめでとうございます。□□君ののろけ話と、幸せな家庭を築くことをこれから楽しみにさせて頂き、お祝いのご挨拶とさせていただきます。」・・・ここで「もう一度メッセージ」を伝え、一番伝えたいことを明確にします。

 

Ⅴ. まとめ

 如何でしたでしょうか。「挨拶」にとって重要となる以下の3点、

  1. メッセージは明確であるか
  2. 話し手の立場は明確であるか
  3. メッセージに直結し、話し手の立場に則したエピソードの存在

 

に注意し、「メッセージと話し手の立場の明確化」→「立場に則したエピソードトーク」→「もう一度メッセージ」の順番で話を組み立てることで、聞き手に分かりやすく説得力のある、共感を呼び響く「挨拶」になります。みなさんもチャレンジしてみてください。

 

「挨拶」においては、聞き手の立場でどのような話が分かりやすく説得力があり共感を呼べるのか、という観点で組み立てられるように、様々なコミュニケーションにおいて大切なのは、相手に対する理解と配慮です。これからも様々なコミュニケーションについて一緒に考えていきましょう。

 

筆者は当サイトにおきまして、コーチとしてのキャリア相談、及びセミナーを開催いたしております。コーチとしてはコミュニケーション全般の他、リーダーシップ、チームビルディング、製薬業界におけるセリングスキル等、製薬業界での経験を活かせた内容のものも行っております。セミナーはコミュニケーションに関する内容となっておりますので、詳しくは、それぞれキャリアサポートのページからご検索ください。

 

 

■執筆者 大野裕之

大学卒業後、製薬会社に入社。当初医薬情報担当者として勤務し、主に大学病院、地域基幹病院等を担当、その後営業マネジャー職を経て本社営業推進に移動。社内コーチングシステム立ち上げプロジェクトに加わりコーチングと出会う。プロジェクト完了後、初代社内コーチの一員として活動を始める。その際営業スキル研修等の研修コンテンツの作成に携わり、後に全国の支店で研修を実施し、その普及に努める。退職後コーチングの資格を取りプロコーチとして独立。現在はフリーランスでリーダーシップコーチ、エグゼクティブコーチ、研修講師、セミナー講師として活動。

 

※資格等

・(一財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ

・ACTP修了(株式会社コーチエィ認定)

・T3プロフェッショナルインストラクター修了(ウィルソン・ラーニングワールドワイド株式会社認定)

・プロジェクトプラニング修了((株)PMコンセプツ認定)