「相談」とは
業務を進めていくうえで様々な問題に直面した時、上司、先輩、専門家等に「相談」をすることはよくあることです。仕事の内容が複雑になるにつれて「相談」をする機会も増えてくることでしょう。「相談」をすることで解決策やそのヒントを得て、業務をより円滑に進めていくことが出来ます。つまり「相談」も業務上大変重要なコミュニケーションであることはご理解いただけることと思います。
「相談」とはどのようなコミュニケーションなのでしょうか。「相談」の目的から考えてみましょう。
「相談」は、自身での判断に迷いがある時、自分以外の経験者、スキルを持っている人、別の視点を有する人、責任者等に状況を説明し、判断を仰ぐことや解決策やその選択肢についての考えを伝えてもらうことが最大の目的です。
つまり自分にとってより価値のあるアドバイスをもらうための工夫が、「相談」を組み立てる上で一番重要なこととなります。
「相談」にとって重要なこととは
では「相談」にとって重要なことについてもう少し考えてみましょう。ここでは「相談」を受ける側から考えてみたいと思います。「相談」を受ける側からすると、以下の3点が明確であれば具体的に返答がしやすくなるのではないでしょうか。
- 具体的に何を相談したいのか
- なぜ私に相談するのか
- 相談者自身は今どのように考えているのか
まず、「具体的に何を相談したいのか」という点です。相談内容や状況があまり具体的でない場合、その「相談」を受ける側からすると、一般論等の当たり障りのない回答しかできないこともあります。具体的な情報を得ることでアドバイスもより具体的にできるようになります。ただし不必要な説明や相談事項とはあまり関係ない情報まで入れてしまうと、相談内容そのものが伝わり難くなることもあるので、組み立てる上でその点には注意が必要です。
次に「なぜ私に相談するのか」という点です。相談を受ける側にとって、相談者は自分に何を期待してどのような観点からのアドバイスが欲しいのか、つまり相談者から見た自分の立ち位置はどこにあるのか、ここが分かれば相談者の期待するアドバイスがしやすくなります。例えば上司が相談を受けた場合、求められているものが組織の責任者という立場でのアドバイスなのか、または経験者としてのアドバイスなのか、それにより内容が変わる場合も考えられます。よりフォーカスされたアドバイスを得るためには、その人に相談する理由を添えたほうが有効と言えます。
最後に「相談者自身は今どのように考えているのか」という点についてです。相談者が今どう考え、どのような選択肢を有しているのか等、予め相談を受ける側が知ることによって、その考えや選択肢を基に新たなものを足したり、不要なものを引いたり、訂正したりすることが出来るようになり、効率的にアドバイスをすることが可能になります。また相談者の考えや選択肢からどのような期待や懸念を持っているのか、そしてそれは相談者がどのようなビジョンや価値観を持っているのかに繋がり、相談を受ける側はその視点に立ってアドバイスが出来るようになります。ここが共有できていないと、無駄なすれ違いや対立に繋がることもあるので要注意です。
「相談」を組み立てる
ではそれらの点に注意しながら、「相談」を組み立ててみましょう。
まず伝えるべきことは、具体的にどのようなことについて「相談」したいのかという点、つまり「相談内容」です。この点を明確かつ端的に伝えることが大事です。そこを後回しにしていきなり状況説明等から入ってしまいますと、相談を受ける側は何について答えるべきなのかが不明瞭となり、期待しているアドバイスが得られないことや、無駄なやり取りが増えてしまうことも考えられます。まず「相談内容」を明確かつ端的に述べ、話のフォーカスを定めることが大事です。
次に「相談」したい「理由」、及び「なぜあなたに相談するのか」という点について話します。なぜ決断、選択できないのか、何が気になるのかという「理由」を上記の「相談内容」を補足する形で伝えます。そして「なぜあなたに相談するのか」を伝え、どのような立ち位置からのアドバイスがほしいのかを明確にします。この二つによって相談を受ける側はどのようなアドバイスをするべきなのかということがより明確になります。
そして、そのあとに現時点での「自分の考え」を伝えていきます。具体的には、このままだとどのようなリスクが考えられるのか、現在選択肢としてどのようなものがあるのか、それぞれの選択肢にはどのようなメリットとリスクが考えられるのか等、整理して伝えていくことによって、相談を受ける側からより具体的で且つこちらの立場を理解したうえでのアドバイスを得ることに繋がります。但し、ここで話すことは「相談内容」から逸脱したものとならないように注意しなければなりません。自分や周りに対する中傷や一般論で包括化するようなことは、得るべきアドバイスの具体性を減少させることに繋がる可能性もあるので特に注意が必要です。
そして最後にもう一度「相談内容」を伝え、お願いをします。再度「相談内容」を話すことで話のフォーカスを定めていきます。
まとめますと、「相談内容」→「理由」及び「なぜあなたに相談するのか」→「自分の考え」→「相談内容」とお願い、の順番です。「相談」はこのように組み立てますが、実際にはまず了解を取ったうえで話を展開していきましょう。
記入例と解説
では実際に上記の方法に従って「相談」を組み立てていきましょう。
まず状況からご説明します。ある医療機器メーカーの営業部員が先輩営業部員に相談します。実は原材料の不足によってある部品の調達が間に合わず、どこかの医療機関に納品を待ってもらわなければならなくなり、どの医療機関にお願いするべきか悩んでおり、先輩に相談するという状況です。
では実際の「相談」です。
「○○さん、今少しお時間宜しいでしょうか。実は今回の部品調達遅延の件でご相談したいことがございます。私の担当先であるAクリニックかB病院のどちらかへの納品が遅れることになったのですが、どちらにお願いするべきなのか悩んでおります。その件に関しましてご相談させてください。」・・・まずここでは了解を取ったうえで、これから相談すべき内容について、明確かつ端的に伝えます。ここでは「納品の遅れをお願いするのは、どちらの医療機関にすべきか」という点です。
「○○さんもご存知の通りAクリニックとはお付き合いも長く、安定した関係を築けております。B病院に関してはまだお付き合いもそれほど長くないですが、購入額はAクリニックの1.5倍ほどあり、今後大事にしたい先であることは確かです。
またAクリニックは以前にも納品が遅れたことがあり、その際にはかなり無理を聞いて貰った経緯があります。B病院に納品が遅れたことはありませんが、その点については常に厳しくチェックが入っております。これらの状況を考えますと、かなり選択に迷ってしまします。
○○さんは両施設の担当歴も長く、双方と良い関係を築いてこられましたので、何かお知恵を拝借できないものかと考えました」・・・ここでは、どのような状況だから迷っているのかという「理由」と、「なぜ○○さんに相談したいのか」という点について触れています。これらの情報から相談を受けた側は、「相談内容」をより深く理解し、送るべきアドバイスをどの観点から考えるべきかを明確にできます。
「私としてはAクリニックにお願いしたいと思っています。と申しますのは、B病院は取引メーカーも多く、取引が他のメーカーに切り替えられる懸念があるのではないかと思います。しかしAクリニックにも前回かなり無理を聞いて貰っており、2回目となると今後の取引に影響する可能性もあるのではないかという懸念もあります。」・・・ここでは、現時点での「自分の考え」を述べています。自分はどうしたいのか、またどのようなリスクが考えられるのか、それらを伝えることで、相談を受けた側は伝えるべきアドバイスの話の起点が明確になり、相談者の考えを基に、加えたり削除したり訂正することで相談者に寄り添ったアドバイスを送ることが容易となります。
「AクリニックとB病院のどちらにお願いすべきか、○○さんのお考えをお聞かせ下さい」・・・ここでもう一度「相談内容」を伝え、話のフォーカスを明確にします。
まとめ
如何でしたでしょうか。「相談」にとって重要となる以下の3点、
- 具体的に何を相談したいのか
- なぜ私に相談するのか
- 相談者自身は今どのように考えているのか
を明確にしたうえで、「相談内容」→「理由」及び「なぜあなたに相談するのか」→「自分の考え」→「相談内容」とお願いの順番で話を組み立てることで、相談者にとって価値のあるアドバイスを受け取り易い「相談」を組み立てることが出来るようになります。みなさんもチャレンジしてみてください。
「相談」においては、相談を受ける側の立場で、どのように伝えてもらうことがより的確なアドバイスに繋がるか、という観点で組み立てられるように、様々なコミュニケーションにおいて大切なのは、相手に対する理解と配慮です。これからも様々なコミュニケーションについて一緒に考えていきましょう。
筆者は当サイトにおきまして、コーチとしてのキャリア相談、及びセミナーを開催いたしております。コーチとしてはコミュニケーション全般の他、リーダーシップ、チームビルディング、製薬業界におけるセリングスキル等、製薬業界での経験を活かせた内容のものも行っております。セミナーはコミュニケーションに関する内容となっておりますので、詳しくは、それぞれキャリアサポートのページからご検索ください。
■執筆者 大野裕之
大学卒業後、製薬会社に入社。当初医薬情報担当者として勤務し、主に大学病院、地域基幹病院等を担当、その後営業マネジャー職を経て本社営業推進に移動。社内コーチングシステム立ち上げプロジェクトに加わりコーチングと出会う。プロジェクト完了後、初代社内コーチの一員として活動を始める。その際営業スキル研修等の研修コンテンツの作成に携わり、後に全国の支店で研修を実施し、その普及に努める。退職後コーチングの資格を取りプロコーチとして独立。現在はフリーランスでリーダーシップコーチ、エグゼクティブコーチ、研修講師、セミナー講師として活動。
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※資格等
- (一財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ
- ACTP修了(株式会社コーチエィ認定)
- T3プロフェッショナルインストラクター修了(ウィルソン・ラーニングワールドワイド株式会社認定)
- プロジェクトプラニング修了((株)PMコンセプツ認定)