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2023-11-08 17:46

伝えたいことを正確に伝えるには 1 ~説明力向上のためのヒント~

伝えたいことを正確に伝えるには 1  ~説明力向上のためのヒント~
説明力向上に必要な2つの力とは? わかりやすく説明するコツを、わかりやすく説明します。

1.「説明力」の重要性

 

様々なビジネスシーンにおいて、説明力は広く求められる重要なスキルです。自分の頭の中にある知識、考え、イメージ等を相手に分かりやすく伝えそのまま理解してもらう力、それが説明力です。説明力が高い人は不必要なやり取りが減り、その分仕事の効率が上がり、結果としてより大きな成果をもたらすことが出来るでしょう。

説明力が不足していると全く逆の結果に繋がりかねません。

 

皆さんは以下のようなことで悩まれた経験はございませんか?

 

・説明が分かり難いと指摘された

・伝えたい気持ちが強いとつい話が長くなってしまう

・何事も時系列で話してしまう

・話しているうちに自分が何を伝えたいのか分からなくなってしまう結論が見えない

・話がそれる、飛ぶ

 

これ等のことで悩んでいられるのは、恐らく説明力不足によるものだと思われます。

 

特に医療業界においては、情報が正確に伝わるか否かが大変重要な問題です。命や生活に直結するような説明の場面も多くあるためです。患者への説明、スタッフ間の情報共有、薬剤情報の伝達等、正確さと効率が求められる場面の連続です。よって説明力を付けることが必要不可欠であることは皆さんも十分ご理解いただいていることと思います。

 

 

2.説明力向上に必要な2つの力

 

では説明力の向上とは具体的にどのようなことでしょうか。

まずここで説明とは何かについて考えてみたいと思います。冒頭でも申し上げましたように、良い説明とは「自分の頭の中にある知識、考え、イメージ等を聞き手に分かりやすく伝え、そのまま理解してもらう」ことです。説明をしているシーンを想像してください。説明する人は聞き手に分かりやすく伝わるように工夫を凝らし説明をします。それだけで説明は完了なのでしょうか。答えはNoです。なぜなら説明のゴールは「伝える」ことではなく「伝わる」こと、つまり「理解してもらう」ことだからです。理解するのは自分ではなく聞き手ですので、聞き手が理解を放棄してしまったら説明は成立しないことになります。

このことから説明力を向上させるということは、聞き手に分かりやすく伝えるという「話す力」と、こちらの話題に興味・関心を持ち、話を理解しようとする聞き手の「聞く力」、この二つを向上させる力のことを指します。

ではどのようにして自分の「話す力」と、聞き手の「聞く力」を上げていけばよいのか、その二つについて考えてみましょう。

 

3.自分の「話す力」を向上させる

 

まず自分の「話す力」を上げるためにはどうするかという点です。このことは古くから、おそらく人間が言葉というものを手に入れてからずっと抱えている問題の一つだと思われます。それ故様々な理屈や方法が存在しています。ただそれらのほとんどに共通する見解があります。それは「相手に伝わりやすい話をするために必要なのは話の構成力」だということです。話の構成力、言い換えると話の組み立て方、もっと分かりやすく言えば話す順番です。例えば物語をドラマチックに伝えるには「起承転結」、論説文には「序論本論結論」といったように、聞き覚えのあるものもいくつかあるでしょう。それら中で、ビジネスシーンにおける説明に適している組み立て方として非常によく使われる方法として、「PREP法」と「SDS法」と呼ばれるものがあります。PREP法とは、POINT(話の要点)、REASON(その理由)、EXAMPLE(実例、データ)、POINT(もう一度要点)の順番で話す方法で、SDS法は、SUMMARY(話の概要)、DETAILS(具体的な詳細)、SUMMARY(もう一度話の概要)の順番に話す方法です。これら二つの方法は皆さんの知るところでも本当によく使われています。例えば、テレビショッピングのCMの作り方はPREP法がよく使われます。また会議等で自分の意見や報告を上手に伝えることが出来る人は、自然と結論から話し、次に理由を述べ、結論で締めるような発言を、所謂SDSの組み立て方を使用していることがよくあります。このようにこの二つの方法は、こちらの伝えたいことを正確に分かりやすく伝える場面でよく使われるという特性があります。

ここではそれら二つの方法について詳しく説明するのではなく、本当によく使われるこれら二つの方法に大きな共通点があるということに着目していただきたいのです。それは、一番伝えたいこと、つまり話の目的を最初に話し、次にその内容について詳しく説明を入れ、最後にもう一度話の目的を伝えるという構成です。何度も申し上げますが、この二つの方法は説明するという状況で圧倒的に使われる方法です。その二つに存在する共通点ということは、説明力向上のためには必須の方法であるということが理解いただけるのではないでしょうか。

自分の「話す力」を上げるには、話の構成力、つまり先程紹介した話す順番を意識して話すことが重要です。

 

 

4.聞き手の「聞く力」を向上させる

 

次に聞き手の「聞く力」を上げるためにはどうしたらよいかという点について考えてみましょう。そもそも「聞く力」はどのような時に向上するのでしょうか。ここで皆さんに少し考えて頂きたいので、次の質問にお答えください。「世界中の誰でも、あるいは歴史上の人物でも良いので、だれか一人に会って話を聞ける権利をもらえたとしたら、誰にどんな話を聞きたいですか?」どうでしょう。織田信長、ジョン・F・ケネディ、大谷翔平・・・様々な人が思い浮かぶことでしょう。そして実際にその方々の話を聞いている時の自分を思い浮かべてください。恐らく真剣に目を輝かせて話を聞いていると思います。その時の皆さんの「聞く力」はかなり上がっていると感じられるはずです。なぜ「聞く力」が上がったのでしょうか。それは皆さんが、話を聞きたいという気持ちが大きくなったから、つまり興味・関心がある話だからです。聞き手の興味・関心を上昇させれば、「聞く力」を向上させることが出来るのです。

では聞き手の興味・関心を上昇させるにはどのようにしたらよいのでしょう。ここでもう一度皆さんにお聞きいたします。これから二つの話題について紹介しますので、どちらの話を聞きたいかでお考え下さい。

 

・超有名気象予報会社が出す有料コンテンツで、皆さんのお住まいに地域の今後1週間の1時間ごとの天気予報

・今まで一度も聞いたことがない国の大統領選挙の結果について

 

どちらの話を聞きたいですか? 今までたくさんの方に同じ質問をしてきましたが、95%以上の方は1、つまり天気予報について聞きたいとおっしゃいました。なぜでしょうか。それは天気予報の方が自分に関係する話だと考えたからではないでしょうか。人は自分に関係のあることには興味・関心を示し、関係がないと思ったら興味・関心は失われてしまうのです。つまり話の中に聞き手と話題の関連性を分かりやすく示すことで、聞き手の興味・関心を引くことが出来、結果として聞き手の「聞く力」を向上させることが出来るようになります。

 聞き手の「聞く力」を向上させるためには、話と聞き手の関連性を示すことが大事になってきます。

 

 

5.まとめ

 

これらの説明力向上の方法論を使って、「話の構成力」と「聞き手との関連性」を考え説明を組み立てると、例えば以下の様な話し方になります。

 

 ここで紹介させていただくのは、「製薬会社社員が、自身の母校の就職相談会に行き、文系学部の学生に製薬会社と、その営業職である医薬情報担当者(いわゆるMR)について説明する」という場面です。話の目的は「会社と、医薬情報担当者の仕事を知ってもらい興味を持ってもらうこと」という内容です。

 

「〇〇製薬株式会社から参りました××と申します。私は医薬情報担当者として勤務しております。○○製薬と言っても皆様あまり聞き覚えがないかもしれません。と申しますのは、弊社は病院で使用する医薬品のみの扱いとなり、街中の薬店やドラッグストアなどで買える薬は扱っていないため知名度は高くありません。本日は皆さんに弊社のことを少しでも知っていただきたいと思い、また医薬情報担当者という仕事はどのようなものなのかということもお伝えしたくて、貴重なお時間を頂戴いたしました。ご興味をお持ちいただけましたら嬉しいです。」・・・ここではまず「話の目的」をはっきり伝えています。会社について知ってほしい、興味を持ってほしいという点です。

 

「弊社は従業員1000人、本社のほか12か所の支店があり、全国で活動している企業です。                   主に糖尿病領域の注射剤や飲み薬などを扱っており、また血糖測定器では全国でトップシェアを誇っております。一言で糖尿病薬と申しましても、患者さんの状態に合わせて色々な薬を様々な組み合わせで、容量も調節しながら使わなければなりません。それらの適正使用に向けて正しい情報を伝達させていただくのが医薬情報担当者としての仕事となります。ですので、医薬情報担当者になるためには専門の知識が必要となります。そのために弊社では丁寧な研修システムがございますので、文系の皆様でも安心して行えます。私も文系出身ですが、毎日充実した仕事をさせて頂いております。」・・・ここでは簡単に会社の特徴やMRの仕事の内容について述べています。会社紹介や仕事の紹介としてはここ迄でも成立しますが、しかしこれだけ興味・関心を引くことは難しいですね。そこで聞き手との関連性を示すために以下のような話を続けます。

 

「皆さん、日本に糖尿病の患者さんがどれくらいいらっしゃるかご存知ですか?糖尿病予備軍の方も含めますと、なんと2千万人もいます。国民6人に一人になります。これだけ沢山の方がいらっしゃると、皆さんの周りにも一人もいないという方が難しいですね。しかし自覚症状が乏しくて放っておかれることも多くあり、その結果、心筋梗塞や、脳卒中、失明、人工透析等重篤な合併症に繋がることも少なくありません。私たちの身近な人たちがこのようなことにならないために、患者さん一人ひとりに適したお薬を正しくご使用いただくために、日々情報提供で医療従事者のお手伝いをさせて頂いく事、その事こそが弊社の医薬情報担当者の使命であると思っております。」・・・ここでは、糖尿病は皆さんのすぐそばにも存在するということを、患者数の多さや合併症の恐ろしさ等で話題にしております。糖尿病って他人ごとではない、自分とも関係があるかもしれないと思ってもらい、仕事の重要性を理解してもらいます。

 

「医師や薬剤師の先生方から、弊社の薬が効果を示し、患者さんの状態が良くなったという話を聞くことがあります。その時に、『身近な人たちの笑顔を支えるお手伝いが出来ている』、そのような充実感を得られます。皆さんと一緒に是非ともこの充実感を分かち合いたいと思いますので、ご興味をお持ちになった方は弊社のブースにお立ち寄りいただければ幸いです。」・・・関連性から繋がる仕事の魅力について話すことで、目的である会社や医薬情報担当者としての認知度を上げ、興味を持ってもらうという結論に結び付けて終わります。

 

いかがでしょうか?

「話す力」を上げるための話の構成力、「聞く力」を上げるための話と聞き手との関連性を示すこと、この二つを考慮したうえで説明を組み立て行うことが、聞き手によく伝わり理解してもらえる説明のヒントとなります。ぜひ実践してみてください。

 

 

■執筆者 大野裕之

大学卒業後、製薬会社に入社。当初医薬情報担当者として勤務し、主に大学病院、地域基幹病院等を担当、その後営業マネジャー職を経て本社営業推進に移動。社内コーチングシステム立ち上げプロジェクトに加わりコーチングと出会う。プロジェクト完了後、初代社内コーチの一員として活動を始める。その際営業スキル研修等の研修コンテンツの作成に携わり、後に全国の支店で研修を実施し、その普及に努める。退職後コーチングの資格を取りプロコーチとして独立。現在はフリーランスでリーダーシップコーチ、エグゼクティブコーチ、研修講師、セミナー講師として活動。

・(一財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ

・ACTP修了(株式会社コーチエィ認定)

・T3プロフェッショナルインストラクター修了(ウィルソン・ラーニングワールドワイド株式会社認定)

・プロジェクトプラニング修了((株)PMコンセプツ認定)

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