求職者に魅力付けするために「カジュアル面談」を行う企業が増えている
転職活動をしているなかで、「カジュアル面談」という言葉を聞くことがあるのではないでしょうか。
ここ数年で、カジュアル面談に対応してくださる企業が増えた印象です。正式選考の前にカジュアルに求職者と話す場を設け、自社の魅力を伝え、興味や意欲を高めてもらうことで、優秀な人材を囲い込みたいという意識が高くなっているためです。
その大きな要因のひとつは、求職者の獲得競争が非常に激しくなっているためです。有効求人倍率を見てみましょう。コロナで一時下がったとはいえ、厚生労働省発表の一般職業紹介状況によれば、令和6年10月の有効求人倍率は1.25倍、同月の新規求人倍率は2.24倍となっており、その傾向は見て取れます。
ただ、皆さん、「カジュアル」とつくくらいだから通常の面接よりは気楽な感じなのだろうというくらいの印象で、十分な準備や、注意すべき事項の把握なしでカジュアル面談に臨んでしまい、十分に目的を果たせない、場合によっては採用企業にマイナスの印象を与えてしまったといったこともあるようです。
ぜひ、このコラムで一般的な「カジュアル面談」についてご説明します。きちんと理解し、良い準備をして臨んでいただきたいと思います。
なお、会社や状況次第でカジュアル面談の位置づけや進め方も違う場合があるので、その点はご了解ください。
「カジュアル面談」とは? その目的とは?
カジュアル面談とは、採用企業の立場から言うと、
「経歴面などで魅力のある求職者が、正式な応募をするか迷っている際、直接自社の説明を行い、正式応募につなげる」
ことを目的とした面談となります。
これを求職者の立場から言うと、
「興味はあるが正式な応募をするか迷っている企業に関し、その企業から直接話を伺い、正式応募するかどうかを決めるための情報収集を行う」
ことを目的とした面談となります。
「カジュアル面談」はどのように設定されるのか
まず、カジュアル面談の話がどういう経緯で持ちあがってくるかですが、以下の2つが一般的だと思います。
(1)採用企業から求職者に直接カジュアル面談の打診がある場合
(2)転職エージェントが求職者にカジュアル面談を提案する場合
(1)に関しては、登録していた転職サイト上でスカウトメールを受け取り、開いてみるとカジュアル面談の打診が来ていたといった場合です。求職者が希望すれば、そのまま面談の日程調整に進みます。
(2)に関しては、求職者が転職エージェントから案内を受けた求人に対し応募に迷っている際、転職エージェントからカジュアル面談の提案がなされるという流れになります。求職者もカジュアル面談を希望した場合、その転職エージェント経由で応募書類を提出し、書類選考を通過すると、日程調整に進みます。
この場合、注意していただきたいのは、書類選考があるということです。「カジュアル」だから誰もが気軽に受けられるわけではなく、上記でも書いたように採用企業はあくまで「経歴など魅力のある求職者」のみに対し、自社のアピールをしたいのです。
ですので、転職エージェントも、その求職者が採用企業にとって魅力的かどうか、きちんと評価したうえでカジュアル面談の打診をしているはずではありますが、急に候補者が増えカジュアル面談を行う必要がなくなってしまうなど、刻々と状況は変わるので、書類選考での結果次第であることは、ご理解いただければと思います。
「カジュアル面談」はどのように行われるか? どのような準備をしておくべきか
さて、カジュアル面談の場では、どのように進むのでしょうか。
これは、会社ごと、応募ポジションごと、さらに言えば面接官ごとにかなり変わってくるので、一概には言えないのですが、ある程度典型的だと思われる流れは、以下の通りです。
(1)採用企業からの会社概要の説明
(2)採用企業からの応募ポジションの説明
(3)候補者からの質問と、採用企業による回答
(1)に関しては、会社のミッションやビジョン、沿革、事業内容などになります。また、人事制度や福利厚生、働き方(在宅利用の有無等)などまで説明してくださる場合もあります。
(2)は、カジュアル面談のなかでも重要な内容になります。役割の詳細だけでなく、やりがい、業務の進め方や協力体制、所属部署の人員構成や雰囲気など、他社の近似のポジションに対し、どのような特徴や魅力があるかなどを説明してくださることが一般的です。「経歴など魅力のある求職者」が、「正式応募したい!」と思ってくれることが目的だからです。
(3)で、候補者は、(1)(2)でより深く聞きたいこと、わかりにくかったこと、触れられなかったことなどを、面接官に質問します。面談全体が1時間としたら、この候補者からの質問に最も時間が割かれることが一般的です。
以上の流れになることが多いのですが、「候補者からの質問に最も時間が割かれる」ということは、候補者はカジュアル面談の準備として、質問を多数準備しておくとが必要となるということです。
そして、それは、量だけでなく質も重要です。なんとなく質問をするのではなく、何が満たされたら正式応募したいと思うのか、その会社に入りたいと思うのかをきちんと整理し、質問に落とし込んでおくことが大事です。
そのために、やはり応募ポジションの役割や要件を再度確認し、また採用企業のウェブサイトなど公表されている情報には一通り目を通しながら、質問を組み立てておきましょう。
なお、面接官は、ある程度会社やポジションについて説明できる必要があるので、マネジャー以上の方が対応してくださる、さらには人事の方が同席してくださることが多い印象です。
「カジュアル面談」の注意点
カジュアル面談がどう進んでいくかをお読みいただき、気付かれたと思うのですが、基本的に採用企業側から質問する時間を多く取るということはありません。候補者の方の質問に回答するために、最低限の確認を取る程度です。例えば、管理職に到達するのに何年程度かかるのかという話題になった際、
「管理職としてどの程度のご経験があるのでしょうか? ある程度ご経験があればそれほど時間がかからないと思うので、管理職のご経験を、経歴書より詳しく伺えますか?」
といった感じです。なぜなら、上記で述べたように「自社への興味や意欲を高めてもらうこと」が目的であり、候補者を評価するための場ではないからです。
とは言え、やはり人間ですので、コンタクトをしてしまえば評価はしてしまいます。
・会社や応募を検討しているポジションについてあまり把握してきていない
・ほとんど質問がない
・質問の内容が事業やポジションのやりがいや内容より、ワークライフバランスや福利厚生、給与水準ばかり
などがあると、マイナスの印象を与えてしまい、その後正式に選考に進んでも、カジュアル面談での印象が尾を引いて1次面接で見送りになるといったことはあり得ます。ですので、「カジュアル」とはいえ、やはり十分な準備をして、真剣に面談に臨んでいただきたいと思います。
まとめ
「カジュアル面談」が決してお気楽なものではないこと、十分な準備をして臨むべきものだということはご理解いただけたでしょうか。
その前提で、興味のある企業やポジションに対しもう少し情報が欲しいという場合、求職者から転職エージェントにカジュアル面談を設定してもらえるかを確認してみるというのも戦略の一つです。自身のご経歴などが、その採用企業にとって魅力のあるものであれば、転職エージェントは積極的に動いてくれるはずです。
ぜひ、「カジュアル面談」を有効活用してみてください。